Takechang の冗談半分 2 #03  1996/05/16 21:59

日本の科学技術の発展方式について

明治以来,日本の科学技術といわれるものは基本的に欧米に学んで来たわけだ。

で,その部分までは東南アジア諸国だってにたような事だ。

が,なぜ日本だけが突出して工業化が進められたのか?

この理由は色々言われるが,最近の僕はこう考えている。つまり,トランスレート方式を取ったために効率が良かったのだ,と。

これはどういう事かと言うと,要するに外国語が良くできる人が,まず外国語の教科書を翻訳してしまう。他の人はこれを使って学習する。

そうすると,外国語が苦手であっても,技術そのものは学べるわけで,つまり技術が大衆化できるわけである。このことが,日本において科学技術の発展にはたした役割は非常に大きいものがあると思う。

たとえば,本田宗一郎さんは尋常小学校しか出ていないから,当然外国語なんて知らないのである。しかし,ピストンリングの製造で行き詰まった時,浜松高等工業学校(のちの静岡大工学部)の聴講生として技術を学んだ。そして,東海ピストンリングという会社を育てるわけだが,このとき,フィリピンの大学のごとく,講義が英語で行われていたらどうだったろうか。おそらく,本田さんには講義を理解することができなかっただろうと思う。

本当の研究者はやっぱり文献を原語で読んでいただろうけど,そのちょっと下のレベルの人が結局工業という実学の部分を担うのだから,この人たちのレベルが上がらなければ国家としての工業の実力は上がらないのである。

さらに例えば,テキストが英語である,というような環境だったら,いったい私のような,高校時代英文法10段階の4といった人間では工学なんぞやりようもなかったに違いない。

フィリピンでは,もちろん生まれた時から回りで話されているのはタガログである。しかし学校に入ると子供達は英語で授業をされる。

だから,英語の理解力と成績はリンクしていて,英語もできないのに大学に行けるなんてことはありえない。

だから,逆に言えばフィリピンで大学に行くレベルの人は当然英語なんぞはまったく問題がない。従ってアメリカに留学するにしても何等の問題がないのである。

TOEFL

このあたりは,アメリカの大学にネイティブでない人間が入る場合には必ず課される,TOEFL の成績が世界で170番目つまり下から10番の日本人とは著しい対照である。

こういう,要するに教科書は原文のままで,人間のほうが教科書に合わせて自分で理解できるようになるのを逐次訳,インタープリット方式とでもいうか。

この方式は個人の能力を要求するので,あまり誰でも,という訳に行かず,結果として工業化は日本に遅れてしまった,といえるのではないだろうか。

しかし,今,これだけ動きが速くなってくるとどうだろうか。フィリピン人は原文のままで理解できるので,追従が速い。一方日本人は一旦翻訳しないと訳が判らない(文字どおり)から,結局翻訳されるまで待たねばならない。この差が,現代の動きの速い世界では命取りである。

今現在,日本の工業が低迷傾向で,アジア諸国が元気がいいのは,こういった理由もあるのではないかと思う。

ただ,日本も昔からこういう訳がない(だって,最初は誰かに訳してもらわなければならなかったのだから)と思っていたのだが,最近雑誌で発見した。

明治9年,現在の東京大学は東京開成学校といった。これが当時,日本で大学に相当する唯一の学校である。

その予科が,官立英語学校で,全国に7つあった(文春ノーサイド2月号,p.113より)。つまり,まさに英語ができるものが大学への切符を手にした時代があったのである。

Takechang の冗談半分 2 #03  1996/05/16 21:59