Takechang の冗談半分 #021  92/ 3/15 22:26

DD展の2

このまえは液晶以外のディスプレイについてふれたが,今日は液晶について書いてみようと思う。

もう,最近は液晶といえば,「TFT」というくらいで,特にカラーのものについてはTFT以外液晶じゃない,といった感がある。

モノクロではほとんどSTN方式なのだから,カラーだってSTNがあったっていいと思うのだが,現役の製品になったのとしては東芝のラップトップぐらいではないだろうか。

ずっといろいろ言ってきたけど,コスト的にはトランジスタを大量に作り込んでいるTFTはSTNよりずっと高いし,作る困難さ(分溜り)もずっと大きいから,液晶屋としても,セット屋としても,なんとかSTN系(または単純マトリクス)のものが受け入れられたらいいと思っているはずである。
(または,ほかの原理の単純マトリクスでもいいのだが,今回はSTN以外としてはSTANLEYのCSHのみであった。このディスプレイも,昨年開発成功の発表があった時はかなり注目されたのだが,今回の展示は昨秋とまるきり同じだった。)

なのだけど,やっぱり見栄え優先の話になってしまうと,STNではコントラストは10:1程度,TFTは100:1程度ということで,1ケタ違うと,値段が違うことなんて,話にならないのかもしれない。
(モノクロではあるが,プラズマも100:1くらいのコントラストがある。はっとするぐらいの表示を得るには,このぐらいのコントラストがいるのかな。)

パソコンの値段から考えて,STNカラーが10万円なら,TFTは30万円というくらいな感じではないかと思えるけれど,今の日本で20万円が惜しいからってんで,TFTはやめてSTNにする人ってどのくらいいるのだろう。

ケチルぐらいならば,モノクロでいいや,ってことになってしまって,結局STNカラーを買う人はない,という風にセット(パソコン)メーカは思っているのだろうか。

こういう部品の展示会に来ると,STNカラーってのは各社からずいぶんたくさん出ているのだけど,実際に製品として見る事はほとんどないのだから。

STNもノート用に厚さ12mmとかの製品が各社にあるし,アナログRGB信号表示が可能なように16色対応になっている。

できる事で言えば,TFTと変わらない(ただし,TFTでは4096色フルに使っていいことになるが,STNでは固定の16色である。でもほとんど困る事はないと思う。単純マトリクス系で4096色フルに出していたのはSTNではないが,CSHという垂直配向のLCDだった)。

コントラストのほかにも,レスポンススピードという弱点もSTNにはある。

電圧をかけてから応答するまで,電圧を切ってからOFFするまでの時間をレスポンスタイムというが,これが,TFTでは100ms以下,ふつう50ms程度なのに対し,STNでは400ms程度が多い。

ここでも,Windowsなどで,マウス常習者が増えたり,それどころかMultimedia化で,VIDEO信号を扱うようになるとSTNでは性能が不足となる(たぶん,きちんとVIDEO信号を見せるには60ms程度が必要になる)。

各社とも,このあたりを考えて開発をしているのだろうけど,どうも昨年秋ぐらいからの進歩はあまりないようである。まあ,考えてみれば当然で,この改良には根本的に液晶そのものの改良を必要とされるわけだから,そうすぐにいいアイデアもないのだろう。

ただし,モノクロでは今回,「高速応答」のものがでてきていた。モノクロの場合,640*480などは完全に量産の領域なので,こういった展示会にでてくるのは1152*900とかのハイレゾである。

これで,Panasonicとか東芝から,レスポンスタイムで200ms程度のものが出展されていた。

今までの1/2程度である。速くなったには速くなったが,もう一声,あと1/2が得られればかなり戦闘力をますと思われるのだが……。

やっぱり,よほどのブレイクスルーを必要とするようだ。

また,昨秋超注目の単純マトリクスとして登場した,キヤノンの強誘電型は今回でていなかった。

なんだか,この項はむかしBetaの末期にSONYがやった「BetaMaxはなくなるの?」という広告みたいで,どうも,STN(単純マトリクスと言い替えてもいい。STN以外はCSHか強誘電かだが,この2つにしても,CSHはハイレゾ化,強誘電はフルカラー表示という弱点を抱えている。しかも,単純マトリクス=液晶自身の光学特性に頼る,ではどちらもとびきりむずかしい方式である)の勝ち目は見えないのだった。

じゃあ,TFTはコスト以外の性能には弱点はないのか? というと,実はあるのだ。

8色表示の時代にはTFTは無敵で,「ほとんどどこからみても見える」と言われたものだが,WindowsやらMultimediaということで,表示するべき色数が4096色とか,もっと増えてくると,視認角度(真正面じゃないところから見ても見えやすいかどうか)特性が悪くなってくるのである。

従来,このことはあまり指摘されてなくて,TFTは(最大)コントラストがいいとか,応答速度が速いとかの長所だけが宣伝されてきたけれど,今回「TFTも視認角が悪い」ことを認めたところがある。ホシデンである。

もともと,他社との比較ではホシデンのは視認角は広い方だし,秋のエレショーでも広視認角表示のデモをしていたが,今回ははっきりこの点をみせるべく,上下に首を振る回転台を使って,従来の表示と広視認角改良型を並べて見せていた。

画面はアナログドライバによるVIDEO画面表示(アナログなので,きちんと何階調とは言えない。しかし,いまのところデジタルよりは比較的楽に多くの色を出す事ができる)だったが,もともと,ホシデンのはわりに視認角が広いため,上側は劇的とはいえなかったが,下から見た場合,従来のはすぐに見えなくなるのに対し,改良型はかなり角度を振ってもきちんと見えていた。

Honeywell Inc.

じつは,この広角度化技術,最近オートフォーカスで話題のHoneywell社の技術である。
(この会社,いろいろなところで,基本的な特許を押さえているものだ。いま,開花してくる技術というのは,基本技術は10〜20年前とかいうものが多いから,今後ともアメリカ企業はこの方式で攻めてくるにちがいない。すでに,テキサス・インスツルメンツなどは,例のキルビー特許……半導体製造に関する基本特許……などでかなりの収入をあげている。)

しかし,この技術,1画素を同心円(というか角)状に分割して,外と内を別々の駆動をするというもので,駆動はおそろしく大変になる。

試作はできても,量産はどうなのかなーという感じなのだが???(オートフォーカスにしても,最初はこんなふうに見えていたのかもわからない。案外,モノにしていってしまうのかも?)

あと,ハイレゾ時代を見越して,TFTも各社からハイレゾの試作品がでていた。

Panasonic  (1152*900 15インチ)
東芝(DTI) (1152*900)
NEC (1280*1024 12.9インチ)
ホシデン (1920*1600 15インチ,ただし,これはデルタ画素配列で,VIDEO表示用)

といったところ。

どれも,ほとんど欠陥らしい欠陥はめだたないし,なかなかのもの。でも,たぶん現在各社が持っている設備では元板1枚からLCDパネルは1枚しかとれず,ものすごい割高になってしまうだろう。

液晶の場合,1995年には,640*480カラーTFTで5万円とかいうことが言われてきたが,いま見えている範囲内ではどうもそんなことはなさそうな感じである。

でも,今の状態を見る限り,そんなに値段がさがらなくとも,結構TFTは認知されてしまっているし,実際,98NOTEのネダンというのは,総合で言えば,同程度のデスクトップと遜色ないわけで(ほんとは,COMDEXの報告で書いたように,日本のデスクトップ機が高いのだが),まあまあ,こんなネダンでもいけるのかもしれない,という気もする。するとSTNカラーはどうなってしまうのか?

ハイレゾ時代は,モノクロからやってくるのか,一挙にカラーか?

昨日のレポートのように,プラズマもヒタヒタと追ってきている感じ。

もうしばらく,フラットディスプレイは戦国時代のようである。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #021  92/ 3/15 22:26