Takechang の冗談半分 #031  92/ 3/30 8:14

Onery

この前,夏休みにPuppet Showをご紹介したことがある。今回も長野県南部の飯田市で行われている(28日から今日まで)お練りまつりのことを書いてみようと思う。

今年は各地の諏訪神社でも,「御柱祭」(神社の神聖な区域を示す4本の柱を6年に1回交換する祭である。アレ,7年じゃなかったの?という人もいるかも知れないが,あれは数えの年数なので,実際は丸6年なのだ)があるけれど,それと同じ周期である。だから,一生のうちでも,10回かせいぜい12回めぐって来るだけの珍しい祭である。

ふつう,「お練り」というと,神が鎮座する本社からよそに出張(神幸)して,氏子の奉斉を受け,戻ってくる行き帰りで,山車,山鉾など祭礼の行列が練り歩くことをいうらしい(百科辞典のウケウリ)。

だから,ここの祭も,諏訪大社のテリトリーで,実際には飯田市宮の前にある,大宮諏訪神社の式年大祭が,お練りであるはずだ。

ところが,この飯田のお練りはメインの行事が大名行列になっている。

これは,明治になって,廃藩後,大名行列の様子を残そうというので式年大祭にのっかったイベントとして始まり,よそではあまりやらなかったからか,これで有名になって,今では,飯田のお練りといえば大名行列という感じになってしまった。
(新聞やテレビなどの報道でもお練り=大名行列という感じなので,ここまで調べるのに結構かかった。)

そのうえ,この地方では,なんでもまとめてしまうのが大得意なので,近隣の町村の祭の獅子舞やらの郷土芸能を繰り出し,それどころか,会津の白虎隊とか岩手の鹿踊りなんてのも加えてしまって,大ごった煮のイベントとなって今に至っている。

というわけで,長野県内では有名な祭になっていて,市の人口が10万人のところへ,3日間で20万人が繰り出すというから,大騒ぎである。

きょうなんか,あさから雨でひどい天気だったが,今(20:40)でも花火がばんばん上がりまくる騒ぎになっている。

大名行列を見てるとおもしろいことを発見する。

今,日本人は「東洋人で,セカセカ歩いていて,メガネをかけていてカメラをぶら下げているやつ」ってなことを言われるが,どうも,大名行列時代は,日本人はセカセカではなかったみたいなのだ。

当時そのままのペースで練りあるく大名行列は,それはそれはスローモーなものだ。

人間スローモーション方式という感じで,1歩進むのに数秒かかる。

その調子で数歩行っては,槍やらまといを回してカッコつけたりしているからちっとも進まない。

まあ,実際には飯田から江戸までの300km近い道のりをこんな調子で行ったのではとても着かないから,こういうのは宿場に着く前後ぐらいにやった程度で,あとはまあまあふつうに歩いていたのではないかと思う。

それにしても,ほとんどカッコつけ以外に何の役にもたちそうにないボンボン付きの槍とか(まっすぐ持っているとまだいいのだが,ちょっと倒してしまうと戻すのがたいへんなくらいに重たい),ほとんど中身より重そうな書類箱,同じく箱だけでもきつそうな篭など,やたら重たいものを持って歩いているのである。

やっぱり昔の人は丈夫だったんだねー,エライモンダなんて感心してしまう。

現代のぼくたちは,バスやら電車で移動しても,タッタ3kgのパソコンで重たい,なんて音をあげてしまうし,600gのTZ803じゃあ,だれも見向きもしないんだからなあ。

ところで,この大名行列の衣装,どうも統一されてないみたいだ,と思ったら実は飯田藩のものではなく,若州小浜藩,奥州仙台藩,播州姫路藩,3家のものを譲り受けて使っているということだ(しかし,すべて本物の大名行列に使用された道具類である)。

3家合体?の行列規模は100万石クラスのものだとか。なんだ,昔の飯田藩(5万石)がこんな規模の参勤交代をやっていたわけではないわけね。

ここで,ふと「1石っていくらなんだ?」とい疑問がわいてしまった。1石とは容積の単位で,180リットルということだ。

ふつう,米は5kg 2500円とか,10kg 5000円とか,重量で売られているから,重さと容積の換算をしなくてはわからない。

ということで,妻からデジタルの小さな秤を借りてはかってみた。

180ccで160gであるから,比重は1より小さいわけだ。

で,10kg 5000円なら,160gは80円。1石とは3ケタちがうから,結局1石とは8万円ということになる。

まあ,家にあった米は精米済のものだし,米の価値も今より昔のほうが高かっただろうから,これで一概には言えないが,100万石の大名,ってことは,年間歳入が800億円の地方自治体のオーナーって感じか。

いま,800億円の自治体とはどのくらいか?

平成2年版の長野県統計資料によると飯田市は約280億円,これはちょっと小さい。長野市は960億円,ちょっと大きいか。

でもまあ,誤差も考慮して,まあまあ長野市程度ってところかあ。つまり,1年おき,長野市長以下数百人の市職員を東京に派遣してたってところだ。これは,加賀100万石コースの話で,飯田藩5万石なんてタッタ40億円の小さな町か村の規模でこれをやらなきゃなんなかったわけで,これはきつかっただろうな。

まあ,バカなことを考えなくとも,装束を見てるだけでも楽しい,お練りまつりでした。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #031  92/ 3/30 8:14