Takechang の冗談半分 #037  92/ 4/ 7 19: 9

4か5

いやー始まりましたCOMDEX Spring(シカゴにて開催)。

ところが,日本では春闘後のお花見シーズン,その上新人はくるわ,ということで,なんとなく浮かれたような日がつづいています。

今,アメリカは大不況のまっただ中ということですが,4か5(シカゴ)あたりではどうなのでしょう。そんな感触が見えますか。

もしも,ショー取材以外で街を見ることがあれば,その辺もお知らせください。また,日本製品不買運動やら,それが高じた日本人排斥は?(実は,ぼくのCOMDEX行きでは,このあたりのことにはまったく触れる余裕もありませんでした。)

さて,ことし,日本企業で一番声高に言われていることは,Gitanesじゃない,時短,すなわち,総労働時間の短縮です。

ぼくの会社では,1989年度2400時間弱程度,1991年度2200時間と減ってきていますが,ことしはこれを2000時間以下に抑え込むというのが目標になっています。

ただ言っても減りませんから,手口はどうするか,というと,ヘンな日本語,「ノー残業デー」の設定です。つまり,「水曜日は手巻きの日」じゃなくて「ノーザンの日」ってことになった訳です。ことしあたり,これを始めた企業はかなり多いと聞きます。

守らせる手口というのも,かなり徹底していて,水曜日の残業申請は人事部の許可が必要。さらに,人事部と組合監視員!が一体になって,終業後パトロールする。すなわち,「カクレ残業(申請しないで仕事だけはやる)」もさせない,という態度なのですね。

ぼくはこのことは日本の労働環境をかなり変えることになるかもしれない,と思っています。

日本の労働生産性は実は低い。それをこの長時間労働が補ってきたわけですから。それとも,会社で残業できないから,家に持ち帰りの仕事が増えるだけ? ならば,よけいみんなネクラになるだけ? 時間の減った分を効率が上げられるのか?

さて,ここで,ひょっとして,日本の労働生産性は高いから経済的に繁栄したと思っているヒトはありません?

じゃあ,労働省発表の「労働生産性水準の国際比較」表を見てみましょう。

日本を100としたときの,各国の労働生産性指数は,

  アメリカ ドイツ フランス 英国
国民経済生産性 95 93 95 66
時間当り生産性 109 119 116 データなし
製造業 生産性 80 77 80 52
製造業 時間当 88 103 105 56
(比較年度) 1989 1988 1989 1987

もう一つ,これを購買力平価で評価したものをあげます。購買力平価とは,通価の交換レートに,実際に同じ品物が買えるネダンの比較を掛け合わせたもの(たとえば,アメリカで,386SX 20MHz,メインメモリ2MB,HDD40MBのモノクロノートパソコンが$2000であるとします。通貨のレートを$1=¥130とすると,これは日本では26万円で買えることになる。実際は買えませんね。いくらか? どうも38万円位でしょう。するとこの場合の購買力平価指数は,130*38/26=190ということになります)。

単なる通貨換算より実感に近い換算ができる=どれだけ働いたら,何が買えるという実感を示す,と言われています。上記のような作業をいくつかの品目について出して平均した物が実際の平価指数になっています。

これで示すと,

  アメリカ ドイツ フランス 英国
国民経済生産性 141 108 120 105
時間当り生産性 162 139 146 データなし
製造業 生産性 118 90 101 81
製造業 時間当 130 120 132 90
通貨レート 138 73 22 236
平価指数 204 85 27 365

どうでしょう,ほぼ,軒並み日本より指標がいいことになります。

この結果からわかることは,日本人は働きすぎといわれているけれど,実際にはだらだらと?やっていて,単位時間当たりの生産力が劣るので時間を長くせざるを得ないという実態が見えてきます。

つまり,今言われているような,「欧米並」の労働時間をこのままの生産性で実現したとすると,日本の総生産力はガックリと落ち込むことになるでしょう。

あるいは,国とか会社の段階でみると日本はものすごく豊かなように見えるけれどそして,平均的な労働者の賃金はかなり高いと言われるけれど,実は為替レート換算で考えたよりか,2/3程度の使い出しかない金額でしかない,ということも解ります。
(そして,時短するので,実質手取りはさらに減ってくる,と。)

Juliet B. Schor
The Overworked American:
The Unexpected Decline of Leisure,
(New York: Basic Books),
January 1992.

逆に,「欧米」の労働はどうなのだろうか,というと,J.B.スコアの The Overworked American などによれば,徐々に長くなっていっているということが書かれています。

つまり,「一人勝ち」の日本に対して,労働生産性だけでは太刀打ちできないので,総量を増やすため,時間を長くしているわけですね。

ここに日本の急激な時短(それも,根本的な体質転換を伴わない=本来,それに併せて,時間当たり生産性を向上させることが必要)が加わると,かなり近い時期に欧米と日本の経済状態は再逆転してくる可能性が強いように見えます。

一人勝ちはいけない,完敗も困る。たぶん,協調が一番いいのでしょうが,協調とは,何を,どうやって行ったらいいのか?

気がついたらトップに出てしまっていた日本の苦悩はこれから本番というわけです。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #037  92/ 4/ 7 19: 9