Takechang の冗談半分 #156  92/ 9/15 7:36

$1000

今日の新聞はアップル社が定価$1000を割る機種を発売すると報じていた。

DOS/Vシリーズでも書いてきたように,ISAマシンの低価格化はすごい。今月は日本さえも386DX 33MHzで10万円(メモリは4MBついているけど,HDDは別売。グロリアシステムズので,日経バイトに広告されていた)なんてのも出ているぐらいだ。

中小がしかけたこの低価格“もってけドロボー大作戦”,超大手の一角,コンパックが参戦したことで,御大IBMもやらざるをえなくなったから大騒ぎ。いまやISAマシンは時価で語られる“ナマモノ”になってしまった。当然,もともと低価格で知られていたDELLやASTといったところが受けて立つ。

というわけで,HPなどでも26%というような大幅な値下げをして参戦。もはやその勢いはとどまるところを知らず,“もってけドロボー!”から,“コロセー”になってきている感すらある。

となれば,ClassicII以来,低価格路線を走ってきたアップルがやらないわけがない。

ところで,ものは高性能化していくのに,値段は下がって行くし,かといってプロセッサはIntelの寡占だから、きっちり利益をもって行く。周辺チップもCHIPSなどからの購入で,HDDはコナーやシーゲート,FDDは日本各社,メモリは韓国や日本メーカーからの購入という状態で,購入品のコスト下げといっても限度がある。残るはじぶんちの組立代を削減するしかない。

こういう戦争で,去年より高性能なものを売っても儲けは半分という事態になってしまった。だからして倒れるメーカーも出てくる。

あの,ワードプロセッサで一世を風びしたワングラボラトリもチャプター11(アメリカ版会社更正法)申請をしているし,日系企業では,昨年のデータショーなどでは実物を展示していた新日本製鉄系のリブレックスも事業から撤退することになった。安値で売る台湾メーカーでさえ,すでにかなり採算がきびしくなってきており,現在500社ぐらいはあると言われるパソコンメーカーの内で100社ぐらいは今年中につぶれるのではないか,という話もある。

そこに新たにアップルまでやってきてどうなるのか? というと,アップルには勝ち残りのためのシナリオというものがあるようだ。


ビジコン株式会社

かつて,電卓大戦争があり,これも今回のPC大戦争と同じ様な強烈な価格と性能の戦いだったことがある。このときはマイコンの産みの親のビジコン社はいうに及ばず松下やソニーなどの名だたるメーカーがほとんど脱落した中でカシオとシャープが勝ちのこった。

最盛期,何十社とあった電卓メーカーはいまや,まともに電卓を生産しているのはこの2社ぐらいのものである。この戦争では,勝ち残りの武器は徹底した自動化とワンチップ化にあった。

昼も夜も休みなくロボットが無人で生産を続ける工場で,フィルム状の回路基板に表示用の液晶とワンチップの回路部分,それに電池をつけてケースに入れれば,はい出来上がり,というようなものだった。この体制について行けない企業はすべて脱落してしまった。

今回のPC大戦争では生き残るのが2社しかないというほどでもないのではないか,という気もするが,アップルはすでに勝者となるべき戦略を固めたようだ。

電卓の自動化に対しアップルの戦略は,ファブレス化。アップルは設計とソフトの会社になろうとしている。生産は日本のメーカー(東芝,シャープ,ソニーといったところがすでに提携している)に任せるというものだ。目標仕様を目標価格で仕上げるなどという技は日本メーカーの得意とするところで,ならばそういう生産そのものに関するリスクはすべておっつけてしまって,自らは生産に関与せず,利益を確保する,というものだ。

いままで,ライバルだった日本メーカーを逆に強力な援軍にしてしまおうというこの作戦,IBMとは対極にあるものだ,

IBMは先日PC事業の分社化を発表したが,これは独立採算にして責任の所在をはっきりするということで,製造に関してはむしろ自社グループ内にさらに取り込んで合理化しよう,という感じである。

まあ,たぶん最終的に生き残りそうな2社の,この正反対の政策が今後どう影響していくのか,興味ぶかいところだ。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #156  92/ 9/15 7:36