Takechang の冗談半分 #169  92/ 9/24 22:55

技術が進んで 2

僕は長野から神奈川の仕事場に来るのにいつも御坂峠を越えてやって来る。

理由は2つあって,中央高速の場合笹子トンネルから東京よりでは渋滞が発生する確率が高く,到着時間が読めなくなってしまうこと。

もう1つは,同じように河口湖に向かう場合,中央高速を使った場合と御坂越えの場合とでは時間は余りかわらず(御坂コースのが30kmぐらい近いから。車のメーターによる)そのくせ高速代が500円位安くできる。たかだか500円だが,年に50回はここを往復するのだから,馬鹿にならない。

まあ,峠というくらいで,そこそこのワインディングロードだから,こんなところを運転するのが嫌いな人にはあまり勧められないかもしれない。

僕の場合はそういうのは苦にならない,というよりその方がおもしろいので,このコース,今の職場に来てからずっと愛用?している。

峠には旧道峠もある。これこそてっぺんまでウネウネと登っていく道である。てっぺんに,余り長くないがまるで上高地に行くトンネルのような,対向2車線はちょっと苦しくて,「大型の対向車がきたら,ちょっといやだな」って感じのトンネルがある。甲府側からこれを抜けるとすぐに天下茶屋という茶屋がある。

御坂峠 天下茶屋

これが,あの太宰治の「富士には月見草が……」っていう有名な茶屋である。太宰氏が来た頃はどうやってきたのか知らないが,歩きだとしたら結構かかったろうな,と思う。

今は車で行くと,旧道起点の宝石や(山梨は,水晶とかが出る)からてっぺんまで僕のボロ車でタイヤ泣きっぱなし(この場合,鳴くよりやっぱり,泣く感じ)で20分。降りるのに10分。合計30分。

新道のほうは,山梨県企業局が御坂中腹に御坂トンネルを作っている。こっちを使うとだいたい10分。トクするのはせいぜい20分だが,車で走っていて20分を取り戻すのは並み大抵の事ではない(当然法律は守っての話でないと,免許が幾つあっても足りない)。

僕は「走りだしたら止まらないぜ!」のなつかしの横浜銀蝿式で走るので,人には「レースやってるわけじゃないのに」とか言われるけど,なに,トイレに1分入るためには,減速 → 車を止める → トイレにいく → 1分 → トイレ出る → 車に乗る → 加速,これで全体で5分でしょう。

なんと1分のトイレのために5分ですよ。5分ったらアータ,高速道路なら8kmのかなたまでいってしまう。

カンケーないけど,なんだかマンセルが,ピットのクルーがドジを踏んでタイヤ交換に15秒もかかってしまったとき,怒りまくってピットロードを出る前にオーバーレブしてパーにしてたことがあったのが,心情的には分かる気がするのだ。

だから,止まるのは非常にキライ,出来る限り避けたい。

というわけで,今日書きたい超技術のおやじさんは,この御坂峠の料金所のおじさんなのである。

僕の場合は料金所でも極力時間をかけたくないから,峠を上がるあたりからシッカと右手に250円(ここのトンネル代は普通車250円)握りながら運転しているのだ。

超技術のおじさんの場合,

停車 → 250円を持った手をつきだす → おじさんの手の平に250円落とす → おじさん,感触でちょうどか釣銭必要か判定 → 人差指と親指で摘んでいた領収書をこっちの人差指と親指の間に(飛ばないように)ネジこむ → ありがとうごさいました → 発車。

こう書くと長いようだが,実に停車時間は一瞬で済む。1秒もない。

そのうえ,2〜3台前の段階で,すでにこの次の奴は釣銭が必要か,その釣銭はいくららしいか?の判定を行っているのだ。

そうして,釣銭が必要な場合は右手で料金を受け取りつつ,左手は窓のところに積んである釣銭セット(これがまた,500円の時用の250円セット,1000円の750円セット,紙幣ありセット,と実に整然と並んでいる)をつかみにいっている。

金額を気にしていそうにないオバハンなどの場合,停車前に「250円です」と声をかけるというワザももっている。
(もっとも,おばはんのばあい,これの効果は薄いようだ。まず,絶対に料金を用意してなく,停車してからバッグを捜してサイフを取り出す。料金所手前に250円と大書してあり,そのうえおじさんが大声で250円と言っているのにもかかわらず,オモムロに「いくら?」と聞いたりなんかするのだ。そのうえ,小銭をがしゃがしゃやったあげく,1万円札を出したりなんかする。ぼかー,そういうヒトの後ろになってしまった日なんて1日気分が悪い。)

このおじさんの料金受取 → 領収書渡しのタイミングは特に絶妙。250円払った瞬間に,もう領収書が渡されている。うーんなんかキモチいい。

「やー,また通ろう!」と思わせるワザではないだろうか?

なーんて,ちょっとおおげさかなあ。でも,これはもう1つの体技,名人,上手,真打の領域だと思う。

高速道路系の料金所や,企業局のでも河口湖大橋なども毎週通るけど,このおじさんのようなウマイ人はいない。大橋のは,ただ領収書を突き出すから,飛んでしまうことがある。

で,一番ヘタッピなのはだれか? というと,これはもう圧倒的に富士五湖道路の自動料金取り機なのである。

こいつは,車がやって来ると,赤外線カメラで車の高さ長さを読み取って,普通車か大型かなどの車種判定をして「料金ハ520円デス」などと抑揚の無い女の声で要求する。

現金も現金投入れ口に投げ込めばいいし(これはほんとうに投げ入れたほうが具合いよくいく。僕の車の場合,バケットシートで,ドアとの間が離れているから4点シートベルトを外さないと手が届かない),札も1000円なら受け付ける。ハイウエイカードも受け付ける。

機械としてはナカナカ優れものなのだが,車種判定 → 料金計算 → 料金投げ込み → 料金判定 → ゲート開放,この動作にひどく時間がかかる。

例によって僕は最速通過を狙っているが,ゲートがあくまで10秒以上はかかる。

そのうえ中にはどこに料金を入れるか分からない人とか,サイフさがしのオバハンとか,自衛隊やUS NAVY関係(こういう人はなんか通行証の様なもので通るので,機械では判定できない。富士五湖道路の脇は演習場だから,こういう人が結構多い)がくると,事務所からおじさんがカケツケてくるまで延々と待たされるハメになる。

こうして待ちの車の列が長くなると,もう1人のおじさんがやってきて,単なるふつうの高速料金所が開店する。そうすると,みるみる車の列が短くなっていく。おじさんなら,平均5秒以内で1台をこなしてしまうからだ。

というわけで,料金収納技術,圧倒的におじさんの勝ち。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #169  92/ 9/24 22:55