Takechang の冗談半分 #240  93/ 1/ 3 23:31

ランドセルを買いに街にでる

1月2日は早朝から店が開いて「初売り」というのをやる習慣である。

昔は正月でなければ無いものも多かったし,年に何回かの買いだしの1回目ということで,商店もきばったものなのだろうか。

朝早いところは3時とか4時とかから商売が始まる。

こんな田舎にもこんなに人がいたのかというぐらいの人出らしい。

らしい,というのはそんな早朝から出かけたためしがないからで,今回も例によって午後からの出撃となった。

目的はこんど上の子が小学校に入るので,通学用のカバンを選ぶということである。

僕が子どもの頃,かれこれ30年も昔にはランドセルってのを買ってもらって,それを6年間使う,というのが美徳?だったのだが,今はどうか。

これが,まったくそのままなのである。

うちのそばの公立小学校には定まったカバンというものはないらしいが,しかし誰でもランドセルというのを買っていくのだそうだ。

「なにも,そんなのでなくても……」と言いかけたが,カバンひとつのことで疎外されても悲しがるかもしれない。じゃあ,やっぱりランドセルを買いに行くか,ということで買いに出たのである。

田舎街のことで,カバン専門店というのは1つしかない。

比較的広い店内の,1/5ぐらいのスペースをさいてたくさんのランドセルが並んでいる。

いろとりどりの……といいたいところなのだが,実際は赤と黒しかない。デザインもほぼ一様で,中の仕切りが3〜4段あって,上に大きいフタがあってこれが完全に半周してポケットすべてを覆う。

完全にワンパターンで,選べるところと言えば,男の子は黒,女の子は赤というぐらいか。

しかし,安いのは15000円ぐらいから,高いのは10万円ぐらいまでと大きい値段の開きがある。

これはどうしてか。材料が合成皮革のやつ,牛の革,馬の革とあって,馬の革で出来たのが一番高い。

あと,手縫いとかいうとこれも高くなる要素である。

一方,重さは合成皮革が一番軽くて800g台,牛が1100g,馬が1300gと高い方が重たい。

その他,耐候性などはどうか。これは合成皮革のは当然ながら雨などには強い。

最近の革は少しの雨なら耐えられるような加工はされているようだが,それでも,合皮ほど強くはないようだ。

強度。「お客さん,いまのはどれでも6年持ちます。よほどの事がなければ。もし壊れてもウチでは6年間無料修理を保証しています。時間がかかる場合は代わりのをお貸ししています」ということでどれでも問題がない。

機能性。どれもほぼデザインは同じだ。1つだけ肩掛けベルトの取り付け部の幅を変えられるのがあった。あと,もう1つだけちょっと変わったデザインのランドセルはモリハナエ・デザインというやつ。

別にチョウチョが付いているわけでなくて,非常にシンプルなつくりで,フタも全体を覆っておらず,上の口がふさがるだけだ。

革製にしては重量も軽いし,これはふつうに大人がもって歩く感覚で作られている。

なかなかいいんじゃないか,と僕は思った。ほかのとデザインが違うところがいいし,当然それが機能的に出来ている。

「あー,それね,」近づいてきた店の親父がいった。「それねえ,都会じゃあ売れるらしいってんで置いてるんだけど,一昨年は結構売れたけど,去年はもうさっぱりでね,ことしも,そう,たまーに見てくれるお客があるかなあ」とあんまり乗り気ではない。

何より,うちの娘が乗り気ではないのである。たしかに,これは加工のせいか,赤の方はちょっとくすんでいて,あまりはっきりした色ではない。

ベースの革の色をあまり殺してないせいかもしれない。

黒の方はつやつやのきれいな黒で,僕としてはこれがイチオシにいいと思った。妻も,「黒は保育園で男の色って言われてるから,どうかなあ」というが,赤のほうは悪くないようである。

しかし,肝心の娘の方がぜーんぜんのらないのである。たしかに,黒の方は「おとこいろ」だそうで,問題外らしいが,赤の方も「キタナイ」と言って気に入らない。

「じゃー,どれがいいの?」と聞いて指さしたのは,う,もう1つちょっとほかと違ったやつ。

どピンクのランドセルだ。これはほかのやつが赤専門なのとくらべ,明るいピンク色をしていて,デザインはぜんぜんフツーのランドセルであるが異彩をはなっているやつであった。合成皮革製である。安い。

これはどうやら,合成皮革のせいで出来る技らしく,そのほかの革のやつにはない。

「ほかのにこういう色は無いんですか?」店の人に聞くと,例によって「いやー,都会じゃあ売れるっていうんだけど,赤以外置いてみても売れないもんでねえ。取り寄せなら出来ますけど」という。

しかし,見本帳を見せてもらうと,やっぱり革のやつはベースの色が白くないせいか,どれもくすんだ色をしていてこういうどピンクはしていない。

「どうしてもこれ?」いっしょにいったおばあちゃんが耐えかねて?革のパール加工がしてあって,真珠色の光沢のあるやつを持って攻めにでた。

娘の反応。「おトーさん,これ高いの? うちじゃあ買えない?」目に涙をためている。

うーん,実は安いのだ。で親としては60nsのSIMMを1ウエイト入れて80nsにしても?少しはいいのを買ってやりたいんだが。

まあ,こうなってはしかたがない。クラリーノのどピンク・ランドセルを買うと,娘はうれしそうに大きな箱を抱えて帰ったのであった。

しかし,ランドセルに始まるど画一教育。

これからが思いやられる気がする。

竹中

Takechang の冗談半分 #240  93/ 1/ 3 23:31