Takechang の冗談半分 #525  94/ 4/19 23: 6

プータロー日記 102>
タイマイ

このあいだタイ米なんて手に入らないと書いたが,ようやくタイ米を入手した。隣の農協ストアでタイ米100%のを2kg 570円で売っていたのである。街の米屋ではブレンド以外手に入らなかったのに,一見米生産者の巣窟でタイ米大反対のはずの農協で売っていた。とにかくこの値段は安い。国産だとランクにもよるが2kg 1200〜1500円ぐらいであるから1/2から1/3だ。タイ米でも値段はそのまま日本産と同じで売っているというような話もあったが,そこまであこぎな商売はしてないらしい。

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米粒をみると確かに日本米とはまったく違う。日本米とくらべて,長さはあまり変わらないが幅がせまくて結果的に非常に細長い(GVM9-380 国産米とタイ米比較の写真参照。今回TWIN BRIDGEを使用して日本語キャプションを入れてみたがどうだろうか。もっとも,高倍率の接写のため,ややカメラがななめになって一部ぼけてしまって,申訳ないのだが)。これだけみかけの違う植物ってのは,普通は別の品種とカウントする事の方が多いのではないかと思う。どうもおおげさにいえばオオムギとコムギをいっしょくたに論じている感じだ。どっちかというと同じやりかたでうまくいかないと騒ぐほうがどうかしている。

と言っていても実際にやってみないとわからないから,まずオカユを作ってみた。一時,「タイ米ではオカユがつくれない……」とかいう話が報道されていたから
(〜行抜けあり?〜)
結果からいえば,タイ米のオカユはうまい。

ただし,作り方はちょっと変える必要がある。日本米の場合デンプン質の溶出が多く,水分を多くしてもタラタラの水にならないでトロリとしたノリ状だが,タイ米の場合は水の部分とコメの部分が分離してしまうから,日本米使用の場合の半分ぐらいの水分にしなくては日本式オカユの概念の食べ物にはならない。

もっとも,少なくも味そのものは悪くないわけで,スープの中に米粒が浮いたものを食べている状況が許せれば,これはいける。これに勇気づけられて,次は普通のメシをたいてみた。この場合,やっぱり米を持った感じからして乾燥しているので,10%程度は国産米より水を多くしてみた。

で,通常通り炊飯器で炊いたわけだ。結果,やはりちょっと乾いているというかパサパサな感じ。日本米のように箸でブロックを持つということはできなくて,1粒づつばらばらになってしまう。箸ではなくてスプーンで食べる食品という感じだ。

これに粘り気を与えようというので,ワイドショーなんかで寒天をまぜるとか,胚芽油を混ぜるとか言っているのだと納得した。

ところで,このぱさぱさ状態というのはチャーハン,ピラフ,カレーとかいったものには都合のいい特性に思える。ということで,これをピラフにしたりカレーのメシにしてみた。

いける。チャーハンも日本米ではべちゃべちゃにならないように苦労するのだが,これでは何の工夫もしなくて,ただ普通にやるだけでうまく出来る。こういう用途としてはむしろ日本米のほうが良くないようだ。

結果的に言って,そういうこの米の産地で食べられているようなものにはやはり適していて,日本米の産地=日本で日本米に対して行われているような加工方法にはあまり適していない,というあたりまえの結果になった。もちろん,タイ米はまずくて日本米はうまいというような分類にはならない。ましてや,2年前まで米自給者だった僕の感覚でいうと,1つの田から取れた米というならともかく,やたらに混ざっている市販の日本米にアドバンテージは感じられなかった。

ではなぜ日本米の買い占めとかいうような話になったのか。あるいは,「死んだおジイさんの仏前に供えるゴハンがタイ米なんて……」と老婆が泣きくづれるのか(これはどうしても,いわれなき偏見だ! なんでタイ米=悪いというようなことを言わねばならないのか)。

結局,本来日本人は外来のものを取り入れるのが得意だというが,どうも混ぜることでごまかすのがが得意なのであって,相手の特徴を評価してそれを生かすなどということはできないということの具体例なのではないだろうかと思う。

米の売り方として,混ぜて売らないとタイ米だけ残ってしまうから混ぜて売れというような食糧庁の話もあったが,これも極めて日本的というか,とにかくまぜてごまかしてうやむやにしようというやり方である。

実際に食べてみれば,ハマリの加工方法の場合はタイ米のほうがうまいのに,なぜだか食べる前から新しく入ってきたものを排斥するような話が出てくるわけだ。本来はユーザ側としても,日本米,タイ米をそれぞれ別々に買えれば,そのほうが各々に特徴を生かして使うことができていいのだが。もう1つはっきりしているのは,多くの日本人は自分で判断しない,あるいは自分の判断よりマスコミとか他人の判断を優先する傾向があるということだ。

マスコミが「タイ米」はまずいといったから多分食えなそうだから,とりあえず国産米を買い占めに走ろう,買い占めが起こったらマスコミが「タイ米の上手なたきかた」を
(〜行抜けあり?〜)
それはどれも自分で判断したものではない。そもそも,同じものを食べたからといって,それをウマイと思うかなどはもっともパーソナルな部分である。それこそ自分で食べてみずしてわかるものか,の世界であるのにこれである。その外のことはいわずもがなというか,よく見れば日本の世の中一事が万事こんな感じみたいだ。

いいとか悪いとかを抜きにしても,なんだかんだいう人は小数派で,例えばこんな政治の状態でも,多くの人は単に花見に浮かれてそのままGW突入体勢で何も気にしていないのである。

それから,タイ米を排斥しようとした行為というのは,日本人にあるアジア人排斥的な部分(例えば,アジア人留学生に部屋を貸さないなど)にも通じるのではないかという気がするし,多くの人が自分で判断しない傾向というのも明らかに幼児からの教育に問題があると思う。日本産米が売られるといえば,長い行列ができるというような話もある一方で,「タイの米なんて……」とはあまりに人をバカにした話である。

僕には結局のところ取り敢えずタイ米という新品種の米が手に入るようになった,つまり選択肢が広がったことがうれしいし,しかもその値段は国産米の1/3だったのだから言うことはないのである。

どうも,こんなウマイ米がしかも安く手に入るのに文句を言い立てる日本の消費者(日本の米生産者なら,文句を言いたいのもわからないではないが)というのもまことに不思議な人達であるという感じがする。

竹中 俊

Takechang の冗談半分 #525  94/ 4/19 23: 6