出典:『リンゴ品種大観』(編著・吉田義雄)
かつて「旭」という名のリンゴがあった(上掲資料では「中〜大」とあるが、実際には小ぶりなリンゴだった)。当時は、果実が青いうちに採ってしまい、竹を組んで紗を掛けた棚に並べ、スプリンクラーで水をやりながら赤く色付かせてから出荷していた。熟れないうちに採るせいもあってか、あまり美味いリンゴではなかったような記憶がある。やがて、資料にあるように、当初「青り2号」と呼ばれていた「つがる」が登場するとともに消えていった。
なぜ「旭」を青いうちに採っていたのか? それは何より見かけが重視されていたからだと思う。未熟なまま棚に並べ日光に当てることで、樹の上にあるよりも早く均一に色付かせ(人工着色と呼んでいた)、少しでも早く出荷する(高値で売る)ためだった。もちろん、それでは美味いはずがない。おそらく原産地の北米では、そんなやり方でなく自然に栽培されているのだろう。
日本では(リンゴに限らず)見てくれの良さが過度に要求されるきらいがある。リンゴに袋をかけるのも同じ理由からだ。袋をかけるのはもともと病害虫を防ぐのが目的だったが、それにより日光を遮っておいて、あとで袋を外すと色付きが良くなるのだ。また雨風から保護されているので果皮の表面も滑らかになる。しかし、一杯に陽光を浴びて育ったリンゴに較べると風味では劣る。
近年では「
美味しいリンゴを見分けるには、まず、赤い色に惑わされてはいけない。赤味と熟度とは必ずしも比例しないものなのだ。むしろその赤味の底にある黄味で判断したほうがよい。リンゴを尻の方から見たとき、その地色が不透明な青味を帯びているようでは未熟である。完熟すると、これが透明感をもった白っぽい黄色になる。グワッシュではなく水彩の色といったらいいだろうか。