Takechang の冗談半分 2 #01 | 1996/05/14 21:07 |
この前の日曜日,写真ガイドの仕事で黒姫山方面に行った。ガイド業者としてはすでに5回目の仕事で,まあまあ順調である。朝出るときはかなりな雨だったが,高速を走っているうちに雨が上がり,いもり池あたりでは絶好のロケーションとなった。霧の中に雪から顔を出したミズバショウが咲いているのだから,こたえられないではないか。10時をすぎるとまた,ぽつぽつりと雨がきてしまったが,スキー場の白樺などの下見もする。11時過ぎには山を下りて,そばや探しである。誰かが「たしか,この近くに有名なそばやがある」といい出したのだ。そばバイブルに出ているという,伝説のそばや ふじおか の探索である。
黒姫の町の方面に行ってしまったり,かなり迷ったが,最終的に発見。街道の広い道からちょっと奥まった道に,ふすぐれた木の看板がめだたぬように立っている。店はそこからさらに数百メートル街道を離れた林の中である。これではなかなか一発では探せるようなロケーションではない。が,しかしついてみると数台入れる駐車場は満車で,路上にも数台止まっている。京都,石川,新潟などのナンバーである。タクシーで乗りつける人もあった。グルメ本などの影響で,いくらど田舎に店を構えても来るところには来るのである。
さて,店の入り口を入ろうとしたが,すでに大勢が待っていて入れない。1回20人づつの入れ替え制,親父がたった一人で切り盛りしているので,出すのも下げるのも手間がかかる。その間,客はひたすら自分の番が来るのを願って待つだけである。
なにせ,最大でも11時30分から15時までしか店を開けない。そして,予定数が終われば閉店なので,通常は15時まで店が開いていることはない。
今回も我々が到着した12時30分の時点で,あと1バッチ(20人)限りといううわさだった。この「うわさ」というところがおかしい。親父は何も語らない。客が,「どうやら,あと20人分で終わりらしい……」などと情報交換をしているのだ。
それでも,また後から後から客がやってきて,待ちの行列に加わる。で,また「どこまで,食べられるんですかいねえ」というわけだ。
あと,特徴は「10歳以下は入店お断り」。小学生でも5,6年になればいいという訳か。
このあたりの手法は,商売の手口としては,客を飢餓状態に置く,というやつだ。商品情報を出さない。あるいは,いろんな制限を設けることで,商品の希少価値を出す。
地粉100%,そば100%などというのもその手法の1つである。
もう1つはここのそばは非常に高価である。メニューはざるの盛りそば1品だけ。それが1人前1300円だ。もちろん,盛りはごくふつうだ。おかわりは1枚800円。
1時20分過ぎに前のバッチが終わり,さらに15分して次のバッチの入店許可?となった。我々の写真集団7人が13番めから18番目,あと金沢からきたという夫婦(この人たちは,いままで2度きて,これで3度目でようやくありついた,と感激していた),以上で本日の数量は終了。以降の客は単に「終わりました」といって帰されてしまう。
飢餓商法は確かに商品の人気をあおり,単価を上げるから,できるだけ少ない数で収益を確保するにはうまい手口である。
さて,さらに数十分して出てきたそばはたしかにまずくはなかったが,うまさの一因には,価格やずっと客を待たせているために単にハラがへって「目黒のさんま状態」になっていたということも寄与していると思えた。
確かにここの親父も脱サラで始めたそうであり,小資本で如何に効率よく,しかし味を追求して,ということを考えた末の手口なのだろうとは理解できる。職人さんとしては有名なんだろう。
でもやっぱり,客は「それでも喰いに来るバカ」である,という態度,あまりほめたり,まねしたりはしたくないものである。さらに,でも,個人が喰っていくということは,いいの悪いのなんて言ってられる場合じゃないこともまた確かなのだ。
Takechang の冗談半分 2 #01 | 1996/05/14 21:07 |