Takechang の冗談半分 #177 | 92/10/10 17:42 |
10月10日体育の日は天気の特異日である。ほとんど晴となるということになっている。
実際今年もよく晴れて,雲1つない快晴のよい天気だった。
となれば,「おでかけ」。
今日は工業団地の「特設会場」で開かれているロシア宇宙博に行ってみた。
Mir Space Stationここには,実物のミール,つまり1990年12月にTBS記者の秋山さん(ちょっと欽ドン番組に出ていたミエハル君に似ている)が乗ったのと同じのが来ているというのがウリである。
工場団地の売れ残りのスペースを使ってロシアの宇宙ステーションがドサ回りにきたわけだ。
さて,工業団地に行ってみると,大型のテントが張られ,アドバルーンが上がっているが,思いのほか人出は少なくて20台程度の車が来ているぐらい。
工事用の移動事務所(1帖)の受付に行くとなんと,お一人様2300円。「げげげ,なんという高さ!(ディズニーランドじゃないぞ)」と驚いたものの,ここまで来てしまって後に引けない。お金を払ってテントに入った。
あるある。ほぼテントの長さいっぱいにミールが置いてある。
貼ってあったデータ表によると,
有人宇宙ステーション ミール
1986年2月20日打ち上げ
全長:13m 最大直径:4.23m(太陽電池パネル29.73m)
本体重量約20トン
内容積138立方メートル
ドッキングポート6個
最大居住人数6人
というところだった。もう1つ,天体観測モジュールクワントというのがあってこれは,
1987年4月打ち上げ
全長:約5.8m 最大直径:4.15m 重量:約11トン
というもので,X線天体望遠鏡4基を備えたその名の通りの天体観測を行うカプセルである。
横腹のたぶん搬入口と思われる部分にタラップが付いていて見物客はそこから入る。円筒の口のドッキング部も開いていて,勝手に出入りできる。
円筒型の外形ではあるが,内部居住室は四角に作ってあり,天井もけっこう高い。じゅうたんが敷いてあったり,木目のパネルが貼ってあって「?」と思わせるが説明の人に聞くとこれは展示で内部を傷めない為に付けたもので,実際はジュラルミン(アルミ合金)で出来ているということだった。
居住区の隣の操縦室の壁がそのまま,ということだったが,確かにアルミ合金製のようだ。ただ,パネル類を留めているネジやボルトのたぐいはどうもステンレスか鉄のような感じだった。以前,ソビエトの戦闘機が北海道に亡命してきた時は通信機器などの素子が真空管で驚かれたものだが,これはどうなのか,と思ったが中身をはぐってみれるところがない。
それにしても,どこも入り放題,写真は撮り放題,居住区も操縦席も何もかも,だ。あと,いじり放題。これでは秘密もなにもあったものではない。本当にいまのロシアは売れる物ならなんでも出ます出します,という姿勢なのだろう。
で,もう一つおどろいたことは,これは本物の予備機である,ということ。つまり,1986年以来飛行しているヤツにトラブルがあった場合はこれを代わりに打ち上げるためのものそのものなのだ。
もっとも,これで3箇所めという日本のドサ回りに出た後では,さすがに宇宙に出るのはきびしいのではないだろうか。
それより,たぶん(ロシアとしては)本物の最先端のブツをドサ回りに出して稼がなくてはならないようでは,打ち上げなんて力はもう残っていないのかもしれない。
(会場の説明では1994年まで次々とモジュールを増設し,最大6モジュール構成の宇宙ステーションになる,と言っていた。そうならば,ドッキングポートを中心にエンピツを6本放射状につないだ形であり,まさに映画などに出てくる宇宙ステーションなのだが。)
まあ,とにかく,もうちょっと中を見てみよう。宇宙食。これはもう昔映画かなんかでみたのそのもので,チューブにはいったやつ,固形のやつ,といった類でぜんぜん食べてもうまそうな代物ではない。
個室。これは寝袋があって扉を閉じられる,電話ボックスの半分ぐらいの部屋が2つ。寝袋といっても,無重量なので,立ったまま寝るわけだ。で,これは2室のみ。6人クルーだったら,のこりの人は単に居住室で寝袋にくるまって寝るだけである。空調はされているので,これでも困る事はないしほんとは寝袋も無くてもいいが,寝ているうちにどこかに漂って行ってぶつかったりしないためにある。確かにこれでもいいのかも知れないが,なんとなくさみしい状況ではある。
ケッサク?なのはトイレ。ちょうど飛行機のトイレのようなものだが,こないだモーリさんのスペースシャトルでも大騒ぎになったように,水がもれたりすると大事なので,すべて吸引されている。小のほうはホースの先の吸盤のようなところにおしあててする。ひょっとすると気持ちいいかもしれない?が,なんだか違和感はある。内部に洗面台もセットされている。
これはほとんど未熟児の保育器の小型版という感じで,手を入れる穴が2箇所と,顔のせの穴があいていて,ここに顔を押しつけて密閉する。
そうして内部で水を噴射して洗うというわけだ。宇宙では顔を洗うのだけでもけっこうな行事になってしまう。
シャワーはもっとたいへんで,天井にしまってある円形のジャバラを伸ばす。その中にはいって,体を洗う。もちろん,水は絶対もらしてはいけない。ミールの乗員は長期滞在するのでどうしてもこのような施設が要るのだろう。
外に回ると,ドッキングポートなどはさすがに鏡面に磨かれているが,まわりの壁の部分は断熱材いりの布でおおわれていて,手縫い。ところどころ綻びをツギあてしてあるところもあるし,色はあせている。
スペースシャトルの耐熱セラミックの外観と比べるとなんともみすぼらしい。
(もっともスペースシャトルは大気のなかを還ってくることになっているが,ミールは打ち上げの時は外側をロケットの外壁でおおわれているし,還る予定はないのだからこれでいいのだろう。乗員だけはソユーズ宇宙船に乗って還ってくる。)
なんだか,ミールはいわゆるハイテクって押し出しのない,ジミなやつである。全体に,スペースシャトルがベンツなら,やっぱりこれはボルガかなんかか?
テントを出てくると,当然のようにおみやげ物屋が店を開いている。ミールTシャツ,スペースボールペン,ミールテレカ,まあこの辺はあたりまえのおみやげ物か。
これだけではさみしかったのか,地元の信州りんごの店もある。漬物屋もでている。これらは,まあ地元だし,工業団地内に工場もあるし,少し許す。
どうしてもヘンなのは和歌山海産物。なんでミールに海産物? ちっともわからない。なんか,やたらに混沌とした「宇宙博」(博といったって,ミールがあるだけ,入場料だけが「博なみ」である)であった。なんとなく,昔ならロクロ首かなんかの見せもの小屋の雰囲気である。
まー,ミールもそういう点ではめった見られない,危ない物件であることはまちがいない。ソビエトが崩壊しなければ,まず長野の山中で子供のおもちゃになっているなんて考えられなかっただろうから。
そういえば,たとえ国際宇宙年といったって,なんで長野の山の中で宇宙博なのだろう。これは聞き損ねた。
TAKECHANG
Takechang の冗談半分 #177 | 92/10/10 17:42 |