Takechang の冗談半分 #432 | 93/ 8/28 23:11 |
松本合宿も無事終わり,ステーキ屋の980円のランチステーキで2時間半ねばったあと,高田さん,小川さんをイトーヨーカドー(松本バスターミナル)前でおろした僕は,その足でコーリン松本に向かった。
光輪モータースコーリンとは光輪と書く,上野の鉄道学校(JRになってからどうなっただろうか)そばのバイク街にあるあのコーリンというバイク屋である。
上野以外では唯一松本に店がある。何でかは知らない。
とにかく,ここにBE-PALとかに広告が出ているバイクのタンクバッグにもなるバックパックを売っているのだ。
このところ,僕は行先毎にバックパックに資料を入れているので,バックパックはたくさんいる。
勤労者福祉センターの英語教室用,写真クラブ用,試験準備用,県の英語教室用……といったぐあいだ。
でもって,このコーリンオリジナルのバックパックはコインホルダとかやたらとこまかいポケットがあるので,ライダー用として使い易いようにできているのだ。
前から雑誌で見て欲しかったけど,なかなか買いにいくことができなかった。2500円。
満足してでてくると,前の晩2時に寝たにしては朝早く7時にはおきていたものだから,眠い。ICから高速に乗る前に7-11でカンコーヒーを買った。
で,数百mでIC入り口である。
ここで,「NAGOYA」と書いたダンボールのカンバンを持った男女を発見。「ヒッチハイカーでも乗せたら,眠気がさめるかな?」と止まってみた。
だだだだ,と男が走ってくる。英語で「名古屋に行くの? 途中までなら乗せてくよ」というと,結構流暢な英語で「途中でできるだけ大きいサービスエリアでおろしてくれ」と返ってきた。
「いいよ,じゃあ乗って」というと,女を呼ぶ。空VAN一式が入っているところに彼らのでかいバックパックを2つ乗せたから,ひどく窮屈であるが,いそいそと乗り込んできた。
こういう場合,相手が男と女というのはまあまあ安心感がある。
ま,ボニーとクライドというようなのもあるが,偏見と怒られるのを承知でいうと銀歯ぎらりのアラブのおっさんだとか,巨大金髪女が一人でヒッチハイクをやっているなんてのはなかなか乗せにくい。
彼らはヨーロッパ系らしい白人の男女である。「日本語話す?」ときくと「少しだけ」「アリガトゴザイマス」「コニチワ」と案外まともな発音だ。まあ,これだけ話せば,ヒッチハイクには十分であろう。行き先は英語版の日本地図を持っており,これで行き先を確認すればいいのだ。
「どこ(の国)から?」とお決まりの質問をすると,「チェコ,チェコスロバキアから」と答えが返ってきた。
「チェコ人? おれ,チェコ人の知り合いがいるよ。イエルカってヒトだけど」というと,「おおおおお……」と彼らが感嘆する。
何のことかと思ったら,「僕らもイエルカっていうんだ」と返ってきた。なんだ,イエルカってチェコの鈴木さん佐藤さん(ウインクか)なのか。
「日本にはどうやって来た?」と聞くと
「韓国のプサンからフェリーボートで下関に来た。下関の知り合いのところに泊まったあと,ヒッチハイクで,京都,大阪,東京,日光に行った」という。
「松本城は見た?」と聞くと
「あーみたよ。なんだか騒然としていたなあ」という。
「そうなんだ。今400年アニバーサリーのイベント中だから,外から城をみるだけでカネをとられるんだ。で,僕はいかなかったね。あと,信州EXPOってのもやってるんだけど,見た?」
「いや,なんだそれ?」
「ほら,あそこにドームとか,あるだろ。あそこでやってるんだ。」
「へー,お金かかる?」
「たしか,3000円ぐらいとられるんじゃないかな。」
「うへー,ちょっときついな」などと信州博会場を遠くにみながら話した。
「あと,どうするの?」
「うん,名古屋とカードには書いたけど,実はこれから行きたいのは伊勢なんだ。真珠島とかをみたい。あと,神戸から上海に船で行くんだ。だから,日本にはあと6日しかいられない。」
「日本人はヒッチハイク乗せてくれる?」
「まあまあ親切だね。大きいトラックなんか結構乗せてくれるよ。でも,あんたみたいに話が通じないから,いつも苦労するけどね。」
「がはは。これでも,だいぶ英語は習ったんだ。」
「あと,日本人はいつも働いているって聞いていたけど,結構みんな遊んでいるね。」
「まあね。いまは子供の学校が休みだってこともあるし,不況であんまり仕事がないんだ。だから,逆に遊ぶ時間はできたんじゃない。」
「でも,日本人のヒッチハイカーってみたことがないな。」
「そうだなあ,あまり日本ではそういう習慣がないね。」
「なんでだろ。こんな安全な国なのに。僕ら,知り合いの世話で行った範囲以外は全部ヒッチハイクだよ。」
ごちゃごちゃいっているうちに早,駒ヶ根SA。ここをすぎるとウチまでにはSAはないから,ここでおろしてやった。
「アリガト」と日本語で言って彼らは休憩所のほうに歩いていった。
あれからどうしただろうか。トラックかなんか拾えたかな。
ほんとに,日本人のヒッチハイカーってのは見たことがない。去年の夏,丹沢で東名を走っていたとき,急に電光掲示板に「前方に歩行者,注意!」と表示されて驚いたことがある。
少し走ると,道路公団の車に追跡されている白人の男が見えてきた。どうも,イエルカ夫妻のように高速でヒッチハイクを企てて,ICで待てばいいものを車道をうろついていたらしい。
「日本では高速道路を歩くのは法律で禁止だ」と,きちんと説明すればいいものを,道路公団の職員がいきなり追い出そうとしたから,怒ってしまったらしい。
捕まえようとする公団職員と高速上で追いかけっこになってしまい,随分危険なことだった。
僕も昨年ぐらいまでだったら,「ゲージンサンとしゃべる」つーだけでのぼせ上がってしまうから,それがイヤで拾うなんてことはできなかったかも知れない。
それでも,トラック野郎なんて退屈だったり,好奇心があったりで,結構のせてやるヒトも多いのだろう。その上,こないだ,ニセの取材申し込みで殺されてしまったヒトもいたけれど,おおむね日本は安全な国だ。
まず,追い越しざまに車から撃たれるなんてことはないだろう。
こういうことで,ゲージンさんとの交流ができるようになれば,それはいいことだと思うのである。
話してみると,結構相手もネイティブじゃないこともあり,日本人と英語で話すみたいに「えーとここは過去分詞を使わなくてはいけなかったっけ??」なんて悩むこともない。要するに伝わればいいのだ。構えないでいけば案外意志の疎通ということはかんたんな事である。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #432 | 93/ 8/28 23:11 |