Takechang の冗談半分 2 #08  1996/06/03 07:33

松川人は国際人である

この前の月曜日,英語クラスの宴会があった。このときもちろん,BBC のディレクタの方の Avryl もいて,Avryls 状態であり,この人も結構おもしろい人だったのだが,今日はこの話ではない。

このとき,僕はマレーシア人たちと,あとこの前ナレーションをお願いした Wang さんと主に話していた。

マレーシア軍団との話もまた後でしておきたいが,今日は Wang さんの話である。

彼女は中国から日本に嫁にきて,最初まったくできなかった日本語が約1年でほぼ完ぺきにしゃべれるようになり,いまでは中国語講座の講師をされている。

で,話が合ったのは,「中国人は1人だとドラゴンだが,3人だとブタ。日本人は逆に1人だとブタだが,3人寄るとドラゴン」という話である。

中国人はとにかく会社員ならみな社長を目指す。その結果,いきおい個人主義であり,共同して仕事を進めるようなことはいまいち苦手である。

一方,日本人のほうは新入社員のアンケートでも,社長になりたい人は半分もいないように,とにかく「食うために」「家族のために」会社員をやっている人が多く,社長になればなったで「晴天の霹靂」といった話が多い。要するに社長になろう,と思ってやっているサラリーマンはあまりいないのである。

日本人はとにかく,現在の自分の身の丈につりあった話をする,ということが求められ,せいぜいが中学校の文集以後では,夢を語るなどということはあまりない。それ以前では,小学生なんかはよく,「大きくなったら何になる?」「うーん,AV女優になって,オカネをいっぱいもうけるのお。」「へー,ノンちゃんは親孝行やねえ」なんて話があるぐらいだから(あれへんて!),日本人も決して生まれつき夢が無いわけではない。が,どうやら夢が消えるスレッショルド年齢というのがあって,それは14〜5歳のようである。どうしてか。

日本に改革はあっても,革命はなかった。それに伊沢元彦さんの言われるように,怨霊信仰の国だから,敗者が徹底的に排斥されるようなことがない。

これは世界史上非常に特異な歴史である。通常は,前の政権を滅ぼしたら,一族郎党みなごろしがあたりまえである。日本では,せいぜいが当主が殺されるぐらいで,全体としては政権が代わったぐらいではなんのこともない。だから,日本人の伝統というのは,次第に発展させて行くようなものになる。半導体にしても,液晶にしても,日本の大技術というのは,みなコツコツと積み上げのもとにできあがっていくタイプのものが多い。

これらを遂行する日本人の特性は「目の前の事態の解決に全力をつくす」ということで,逆に大局で物を捉えようとする考え方はおよそ希薄である。

あるいは,大局でものを語ると大言壮語といわれ,たとえ矮小な内容でも現実の成果を示すタイプは,不言実行ということで,尊敬されたりする。

このことは,日本以外の中国も含めた社会では,まったく良しとされない。言外の内容などというものは,本当に無いよう,なのであり,日本人の,言わないけど実は裏にはこれこれの理念があります,なんてのは全然通用しないのである。

Wang さんも,いまは日本人とはそういうものだとしないとつき合えないから,そうしているが,当初,日本人は信用できない,とか,判らないと思ったそうだ。

日本人の間ではつい杭を打たれてしまう,出る釘状態というのが,実は国際社会がいちばん日本人に求めているものであり,またそれが出来ない日本人という事が,国際社会では非常に大きい問題になっているのである。

もう遅い部分も少なからずあるのだが,それでもやはりそのあたりの感覚を国際水準にしないと,日本は国際社会の孤児の度をますます強くしてしまうだけだ。

マレーシアの人も考え方は中国人と非常に近い。こういう行動様式上の問題以外にもアジアの同胞との間には日本人はいろいろな問題をかかえる。そして,欧米はいうに及ばず,彼らとも本当の友好関係が結べない。

長野県下伊那郡松川町

でも今,僕が松川についていいと思う事は,どの外国人に聞いても,「松川の人がいちばん心を開いてつきあってくれる」と言う事である。

現実には,マレーシア人たちを無視する連中も多いのだが,でも彼らと継続的に集会やパーティーを行っているのはたしかに松川の我々だけである。

草の根の活動などというものはなかなかイニシアティブを取るまでにいかないが,こういった活動がもっと広まり,ひいてはアジアの同胞と日本との関係がまともな形に改善される事を願ってやまない。

外人といってまぶしいような話を欧米の人(それも多くは白人)に対してはするが,アジア人に対しては明らかに蔑視のような視線が日本人の多くにあるのは非常に残念なことだ。英語一つを取っても,彼らは日本人よりよほど優れているという事実を,もっと謙虚に,厳粛に我々は受けとめ,他人をおとしめるのでなく,自分の能力を向上させる考え方を広めたいと思う。

Takechang の冗談半分 2 #08  1996/06/03 07:33