Takechang の冗談半分 #435  93/ 9/ 1 22:23

プータロー日記 52>
安曇野と旧車

青木湖の撮影会に行くには,松本からずっと安曇野を横切って,大町にはいり,さらに奥の仁科三湖のうちでも一番奥の青木湖に行くわけである。

この道すがら,気になることは,ぼくの家の近くではまったくなくなってしまった茅葺き屋根の家がまだ多数みられることである。

それ以外にも,昔の街道筋では(昔,日本海から山国信州に塩を運んだルートなので塩の道と呼ばれる)宿場の旅籠のようなところがそのまま残っていたりする。

古いものを大切にしている,今の僕達の生活からなくなってしまった考え方が,まだここには残っているようである。

この点でさらに気になったのが,旧車,つまり古い車たちの存在である。

松本から大町までの街道沿いには古い日本の名車達が点在するのである。それも,現役のものが多いからまたびっくりである。

松本に近いほうからいうと,パブリカUP10。トヨタの国民車構想の車で,800ccのエンジンがついた,過去トヨタでは最小の車である。

空冷水平対向2気筒という,トヨタにしてはめずらしいエンジンを積む。このエンジンはパブリカ亡き後も,大型バスのエアコン用サブエンジンとか,例えばレントゲン車の電源用ダイナモのエンジンとか,いろいろなところで活躍したエンジンであるが,実用エンジンであるゆえ,評価は特にされない。

ただトヨタスポーツS800(通称ヨタハチ)にも使われたエンジンである。ヨタハチは生産台数せいぜい3000台というところにしては,日本にめずらしいスポーツカーなので多数生き残っておりあちこちでまだみかける。実用車のパブリカのほうがむしろ少ないかも知れない。

ただ,僕の町にはパブリカを現役で使っているヒトが2人いるから,僕にとってはあまりめずらしくないだけだ。性能的にもリッター30km程度走る経済性といい,いまでも立派に通用する車なのである。

穂高の町中に行くと,これは超稀少車に出くわす。それも2台いっしょにあるのだから驚きだ。

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> 224. CONTESAC.JPG TAKECHAG 93/ 9/ 1
> (安曇野の旧車:日野コンテッサ)

これが,写真に示す日野コンテッサで「貴婦人」と呼ばれた美しい車である。昭和40年位のものだから,もう30年ものということだろうか。

今はトヨタグループの大型車(トラック,バス)専用の会社になっている日野であるが,当時はフランスのルノー(日野ルノーR4などをおぼえているヒトは結構ジジイである)と提携したりして,乗用車も作っていた。

今,フランス車というと,FFという感じがするが,FFのためには駆動輪が操舵できなければいけない。この事は機械的に非常に複雑になる。

だから同じプロペラシャフトのない方式といっても,当時の車はリアにエンジンがあって,リアホイールを駆動するRRだったのである(ワーゲンビートルなんかもそう)。

このコンテッサも,日野の独自開発であるが,機構的にはルノーの流れをくんだRR,デザインはイタリアのピニンファリナ工房という,ちょうどいま韓国車などに見られる作り方だった。日本の自動車産業が世界を席巻する前のことである。

チラと見るだけで,ものすごい丁寧なつくりが分かる。実際,この車は非常な高額車で,金持ちしか買えなかった。安曇野の車も,大きな割烹の主人の持ち物である。

さらに北進すると,またまた もっと強烈なのに出会う。

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> 225. R360C.JPG TAKECHAG 93/ 9/ 1
> (安曇野の旧車:マツダR360クーペ)

マツダ(当時東洋工業)のR360クーペである。UFOのようなスタイルがなんとも常識やぶりだ。

これの次の車は名前は「キャロル」だから現代にもよみがえっているし,昔の車のほう(軽にしてはめずらしいノッチバックでトランクを持っていた。エンジンはマツダ得意の白いエンジン,総アルミ製のなんと360cc 4気筒である)も比較的あちこちでみかける。

しかし,R360は,僕は中学生ぐらいからあと実物を見たことがなかった。黎明期の軽自動車なのである。

写真を撮らせてもらったあと,オーナーのおじさんに話を聞くと,この人も,「ナンバーをつけて走っているのは1度しか見たことがない」と言ったから,たしかにそうとうなものだ。

今時,かえって英国車のバンデンブラスプリンセスあたりのほうがよく見るのではなかろうか。なんだか,外車は大事にするくせ,日本製の車はナメているひとが多い。

エンジンはVツインのOHVをリアに積む(RR)。

このスタイルでちゃんと4人分のシートがついていた。持ち主の人は特に古い軽自動車が好きなようで,ふだんのアシにしているのが,ホンダのN360だそうだ。これも一世を風靡した車である。

あと,もう少し大町よりにはスバル360も無造作に空き地に置かれていた。この車はエンジンが2サイクルでシンプルだし,10年間もモデルチェンジなしで生産されたために,元々の台数が多い。いまだにあちこちでみかける(そういえば,これもRRである。今回紹介したのはなぜか,RR車が多い)。

こういう車が未だに現役でいられるところ。安曇野はなかなかのものである。

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実を言うと,もう1台とっておきのを見つけてある。

ダイハツの2トン積み3輪トラック。

7ナンバーを普通乗用車に開放してしまったように,もうこの手の車は何台もないはずだ。しかし,かつては日本の産業の復興を支えた,無くてはならない車だったのである。
(写真は別途紹介する。まだ,現像ができていない。)

旧車マニアなら,まだまだ裏道なんかに入ると思いもかけないのを発見するかもしれない。

あまり,語られないと思われる安曇野の魅力の1つである。

竹中 俊

Takechang の冗談半分 #435  93/ 9/ 1 22:23