Takechang の冗談半分 #006 | 92/ 3/ 2 0:12 |
正月頃から春にかけてが,日本ではマラソンシーズンです。
マラソンってのは,あまり暑いとだめ(やっぱり30度もあっては,そりゃ走らなくたって暑い)なので,せいぜい20度以下,風がないこと,かんかん照りではなく,うすぐもりぐらいがちょうどいい。
この季節,日本の太平洋側は,まさにそんな天気が続くから,毎週なにかしらの大会があります。日本生まれのリレーマラソンの駅伝も結構多い。
今週は名古屋の女子マラソン。男で2時間10分,女で2時間半,テレビから流れてくる映像は,要するに何人かが走っているところを映しているだけ,ってわけだけど,これがおもしろい。
結構,いつもお昼ごろに始まって,2時すぎか,3時少し前まで,なんだかんだ言いながら,お茶を片手にずっと見てしまう。
ただ,走るなんてのは人間だれでもやれることで,一番基本的な動作だ,それをずーっと見てておもしろいか,ってと,これがどうしてなかなかにいろいろな駆け引きってのがあるようなのです。
先頭を走るか,3番手で行くか,右にでるか,左か,真後ろか。ピッチをどう取るか。道路の真ん中か,はじを通るか。
ライバルとピッチを合わせるか,抜くか,あくまで自分のピッチを保持するか。
補給用の飲物を取るか,取らないか。
たんたんとしているように見えて,その実,瞬間瞬間に,こういった作戦が展開されてるわけですね。
今回はバルセロナ・オリンピックの選考会も兼ねているとかで,代表になれる可能性のある,谷川選手なんかは,それこそ,一挙一動に「谷川,スペシャルドリンクでなくて,オフィシャル飲料,キリンの清涼飲料を取りました(しっかり,スポンサーの宣伝もしている)」「先ほどに比べると,やや,苦しそうな表情(ほんとは変わったかどうか,そりゃ,めいっぱいハライタってな顔をしてればわかるけど,そんなこまかくわかるものか?)」先頭から数メートル遅れれば,「谷川,遅れ始めました,勝算はどうなんでしょうか」いろいろな解説をつけられてしまう。
こういうスポーツの中継ってのも,むずかしいですね。TVで映像で状況がわかる訳だから,あまりいろいろ言いすぎるのもいけない。
かといって,途中計時しか言わないでも手持ちぶさた。
解説の人だって,あまりしばしば「どうでしょうか……」と聞かれても,2時間近くもしゃべってりゃ,過去のデータもほとんど出しちゃってるし,野球解説の名人のように,「あー,なんとー,モーシマショーカア……」とかいって時間を埋めていなくっちゃならない。
逆に,古舘伊知郎さんみたいに,しゃべり続けってのもまた,たぶんやりすぎ。
こういうのは,昔のプロレスとかのように,善玉,悪玉ってのがはっきりきまっていて,流れとして,最初,善玉の方が一本取られて,しかも悪玉の「卑劣な(ほんとは示しあわているのだが)」反則技で額が割れて血がしたたり落ちる,そこで力を振り絞って,善玉が一本取り替えしてタイに持ち込む。でもって,また反則技でやられかかるが,そこで「伝家の宝刀」って決め技(力道山の時代なら,カラテチョップとか言って一発殴れば決まっていたけど きょうびでは,だれもそんなのでは倒れもしない)で一発逆転,っというようなストーリーのある,スポーツというよりか,ショー,って場合にはあのスタイルはノリがいいのですが(F1はちょっと,あれはぼくは嫌い)。
(そのほか,一世をフウビした,キックボクシング。沢村忠なんて,まさにこの典型でした。カウント8位までぶったおれるのを3回ぐらいやって,危機感?をあおったあげく,真空飛び膝ゲリ一発でKOで決める,ってな。で,アナウンサーの石川さんが,さけびまくるという……。ショーだと知っていても,毎回あそこまできちんきちんとぶったおれると何というか,そのハクリョクについうたれてマジになってしまうものでした。どうせ,最後には水戸黄門の印篭のごとく,真空飛び膝なのだけど。)
さて,マラソンの場合,20km,25kmと距離が行くと一時単調になりかかるけど,早くて30kmかまあ35kmぐらいから,一気にドラマが動き始めます。
30km位までは,だいたいは数人から10人位が「先頭集団」というかたちでまとまって走っているわけですが,このくらいから,そろそろ,1位,2位を狙うあたりの選手がスパートをかけだす。
一人がスパートをすると,ほかも,まけじとついていく。この辺で,スパートの駆け引きに破れるともう立ち直りが利かなくなり,走ってはいるんだけど,ずるずると後退しはじめる……あるいは,スパートのタイミングをしくじるとあと,いくらピッチをあげても,相手も同様にあげるので,結局「こんなはずじゃない」と思いながら,まったく追いつかない……とか。
今日のような女子のレースだと2時すぎからが,このドラマの始まる時間となります。
少し前までだと,日本人では本命視されていた選手はだいたい,コチコチになってしまって,この段階で脱落,ということが多かったけど,最近は日本人も変わりましたね(あるいは,フロックでない実力がついてきたということかもしれない)。
ちょっとぐらい騒がれても,本命の選手はやっぱりきっちり先頭に近いところをやってくる。ついこのあいだまでは,「プレッシャ」に負けた,とかいう言い訳が多く聞かれたものですが。
結局今回は,初マラソンの大江選手が優勝,「本命」の谷川選手は2位,2時間31分09ということで,どうやら,オリンピックのキップはだめだったらしい。
(それでも,自己記録は更新しているわけだから,やっぱり彼女としては 最高のレースはしているわけですね。これでだめ,ってのは要するに実力が不足な訳で,残念とかいう話ではないと思う。能力の範囲内ではよくやったのであって,それで足りないものはどうこう言ってもしかたない水準の,ないものねだりの話になります。以前の日本人だと,こういうふうではなくて,大きくくづれてしまって,自己記録も出せないことが多かった。)
しかし,レースはいつも本当に無情だとも思うわけです。
時間で言えば,大江選手は9064秒,谷川選手は9069秒,差は0.06%しかない。ほとんど本質的な差はない。これであと5秒,9000秒のうちでほんの5秒谷川さんがどこかで稼げていれば,バルセロナへ道はつながっていたのかもしれない。
(この感覚は,一般事象とか,化学的の感覚なのかもしれない。レースではとにかく速ければいかに少しでも違っていればいい,というより測定できる限りにおいて差を示して優劣を争うのが競技というものであるのかもしれない。また,半導体なんかの99.99999999とかいう数字からいえば,お話にならないぐらい大きく違う,といわなくてはならない事かも知れない。)
とにかく,歴史は過ぎ去った1つしかないのであって,「もし」などという事には何の意味もないわけですけれど。
TAKECHANG
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