Takechang の冗談半分 #172  92/ 9/30 23:10

CDはCDでも

今日はキャッシュディスペンサのCDの話をしようと思う。

ディスペンサというと,直訳では分配機という感じだろうか。

こっちは引き出す(draw),というつもりでいるわけだけれど,先方からすると,ため込んでいる現金を配ってやるって感じになっているということだろう。

なるほどなあ。

ところで,この機械の使い勝手は銀行毎にかなりな違いがある。

僕がよく使うのは長野の八十二銀行と,神奈川の横浜銀行だけれど,そのほか第一勧銀とか三菱銀行(これは秋葉原でお金がなくなると,ヤマギワの前のところにカケツケるから。以前,地方銀行系のカードと都市銀行系のカードが互換性?がなくて使えなかった時はこまったものだ。都内では都民銀行が地方銀行だけれどあまり繁華街などのいいところには無いような気がする。その他の地方銀行でもいいが,こういうのは新宿駅とか,東京駅とかいった地方へのターミナル駅の近くにしかない傾向である)なども結構使う。

以前はCRTにメニュー表示が出ていて,下のキーボードで番号選択し,暗証番号を入力するとかのやつが多かった。

長野の僕の家のそばのやつではいまだにこういうのがある。「いまだに」とか,悪いような印象の書き方だが,自分の口座から現金を下ろすには別に問題ない。その他の機能,例えば送金とかができないだけだ。

最近のやつはたいていタッチスクリーンキー式である。比較的大枠でCRTにメニューが書いてあって,必要な内容の上にさわると入力されるようになっている。

数字なんかも,数字キーが出てその上をさわれば入力できる。非常に便利だし,直感的に分かりやすい。

しばらく前の事になるが,僕もこういうタッチスクリーンで指示するタイプの検査データを集計する装置の製作をやったことがある。このときは非常な不評だった。

銀行並に分かりやすく,をねらったのだが,タッチスクリーンがいけなかった。CRTに後付けでかぶせるタイプのものだったため,まずここで反射が起きて表示のコントラストが悪くなってしまった。

そのうえ,このタッチスクリーンの厚みが5mmぐらいはあった。このためにCRT上の表示とスクリーンのタッチ位置ではちょっと角度があるところからみると,視差のために位置的なずれが起こる。

さらに,メニューを詰め込みすぎたので,ついあるメニューを押したのだが実際には隣に入力してしまった,というような事故がしょっちゅうおこった。

ということで,この装置はすぐにだれも使わなくなった。

さて,銀行の機械はさすがに優秀で,このような読み間違いはまず無い。さらに芸コマで,人がいなくなるとCRTを消したり,あるいは画面表示が切り替わって「おトクなMMCをどうぞ」といった文字が動いたりするスクリーンセイバーがついていたりする。

中には人が近づいたのを感知して立ち上がる時,「いらっしゃいませ」とかしゃべる上に,CRT上ではアニメの行員がお辞儀してたりする。

特に僕が気に入っているのは横浜銀行の機械である。
最初に

現金引出し  通帳あり 通帳なし
預金 通帳あり 通帳なし
残高照会 通帳あり 通帳なし
振込  振込カードあり   振込カードなし 

などのメニューが出ていてそれを選択する。引出しならこの次に通帳をお入れくださいか,カードをお入れくださいときて,暗証番号を入れる。この操作ではどこのでも特別遜色無い。

はまぎんが秀逸なのは振込である。
(余談であるが,はまぎんで窓口から振り込もうとすると,どうしてあんなにめちゃくちゃに時間がかかるのだろうか。朝,シャッターが開くのを待って一番で飛び込んでも10分以上かかる。前に待っている人がいたりすれば30分を覚悟しなくてはいけない。人手でやると人件費がかかるから,できるだけ機械でやらせるように仕向けようという作戦なのだろうか。)

特に現金振込。八十二銀行では振込は口座からの振込しかそもそもできないし,いつだったか,京都で某都市銀行から振り込もうとしたときはハマった。直接振り込むことが出来ない。別に振込先設定機というのがあって,まずそこで相手先の登録をしなくてはならない。僕の場合はさらにこの銀行に口座がなかったので,振込者の登録もしなくてはならない。住所,氏名,電話番号,口座番号,銀行名,支店名とぜんぶタッチキーから入力してようやく振込番号というのをもらう。しかるのちにCDにもどってこの振込番号を入力し,さらにまた住所,氏名……と入力するのだった。とうぜん慣れているわけもないから,銀行の担当の人に聞きながらやって,30分近くかかったかもしれない。一緒に行った人には「たった5000円振り込むのになんでこんなにかかるの?」と呆れられた。

その点,はまぎんのでは,まず振込先の銀行名の頭文字を選択,表示された銀行名から目的のを選択,支店名も頭文字を選択,表示された支店名をタッチというふうに最小のストロークで入力できる。氏名などはアイウエオ順のキーにタッチするのでちょっと面倒だが確実だ。金額などは数字で入力。確認を求めてくるのでOKをタッチすると現金を要求してくる。これが1円玉や5円玉でも受け付けるところがエラい。

清算が済むと最後に振込カードを発行しますか,と聞いて来る。はいと答えると紙のチャチな磁気カードが発行される。これがあると次からはカードをいれるだけで振込者,振込先の入力が出来る。僕はアパートの駐車場代をこうして払っている。

というわけで,はまぎんCDはサイコーだと思っていた。

ところが,今日いつものように駐車場代を払いに行った時のこと。CDで現金を引き出して,振込しようとしていると(僕の預金ははまぎんではないから,口座から直接振込はできない),左となりにいた二人組のばあさんから,「ねー,あんちゃん」と呼びかけられたのだ。うん,ちょっと若返った気がする。

そりゃまー,どうでもいいとして,「何ですか」というと,「この機械,カードがはいんないけど,故障だろうかねえ」という。そういえば,僕が来るより前からCDの前にいたようだ。

「さーわかんないけど」と銀行員を呼ぼうとすると,「ほらね」とか言って一人のばあさんがカードをカード入口につっこんだ。

なんだ,分かってしまった。ばあさんはメニューの選択をしてない。「カードで引き出し」ならば,最初に 引き出し 通帳無し のメニューを選択しないとCDはカードを受け付けないのだ。

「ほら,ここ押すんですよお。ね」無事カードが受け付けられ,暗証番号の画面がでた。ばーさんは,「あらー,なーんだかねー」とわかったようなわからないような発言をして暗証を入力しはじめた。やれやれ,である。

ところが。今度は右隣のばあさんからのお呼びである。「ねえ,ちょいと。あたしゃ三菱銀行のカードなんだけど,これじゃ使えないんだろうかね?」「いや,今は都市銀行と地方銀行は相互乗入れしてるから大丈夫ですよ」と僕。「ほら」ばーさんはまた無造作にカードをつっこうもうとして出来ない。これまた,メニューを選択してなかったのだ。

こうして立て続けに,気に入っていたはまぎんのCDインターフェイスは弱点をさらしてしまった。

デフォルトでなんらかの動作が出来るというのがないのがいけないのかな? そういえば,三菱銀行のやつでは,ただカードだけを突っ込むと,通帳無し引き出しとして動作したかもしれない。あるいは,引き出し専用のデパートとかにあるやつがそうだったか?

してみると,最初のばーさんも,はまぎんインターフェイスに慣れていないということ? おとしよりなどの場合,いったん覚えたインターフェイスから外れたことは考えない傾向があるし,だいたい,メニューなんて読んでないのかもしれない。

いつも,窓口営業時間中は銀行員のおじさんがCDの側にウロウロしてるってのも結構こういうヒトが多いということなのだろう(今日は5時半すぎで窓口がしまっていた)。

音声応答するようになれば,おじさんがいなくても良くなるか? これでも,「あたしゃねー……」なんてのを理解するのは困難かも。

「すごいけど,簡単」とかいうが,機械と人間の接点というのはむずかしいものだ。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #172  92/ 9/30 23:10