Takechang の冗談半分 #527 | 94/ 4/27 23:20 |
日本のショーに行ったからといって,企業がその後もいろいろな新製品カタログを送ってくれるなどということは余りないが,アメリカや台湾の企業はいつもそうである。
大手のところ,ぜんぜん記憶に無いちいさな周辺機器のメーカから,果ては大学が学校で開発したビジネスソフトの案内をよこしたりする。
台湾なんかは昨年まちがって?コンピュータショーでなくエレショーに行ってしまったから,電力用の電線から,巨大なトランス(特別高圧の6600Vから220Vを作るやつとか……),半導体の検査装置といったものまでやたらとカタログがくる(もちろんコンピュータ関係も混じっているのだが)。あるいは,うちのFAXから,中国語で,どうやらトランスの案内書のようなものが出てきたことがある。直接電話がかかったこともある。バイタリティがあるというか,日本人でいえば伝説化しているアフリカにステテコを売りに行った男みたいなやつばかりという感じだ。本当に,日本ではこのぐらい根性の入った営業にあったことがない。たぶん,いま日本がおちぶれている理由の1つだろうと思う。
とにかくいろいろくる。郵便物で驚くことは,時にでたらめな住所が書いてあっても僕の手元に届く事で,とにかくなんだかんだ言っても郵政省はエライというしかない。
郵便番号はやや近いが僕の町のものではなく,市の名前も同じ県内だが違うところ,合っているのが番地とその上の小割りの住所部分,で名前は合っているなんていう郵便物がアイルランドとかデンマークとかからやってきて,ちゃんと僕の手元にあるのだから恐れ入る。あちこちの町を経由してくるから,付箋が山のようについているが,それでもちゃんとくる。
こういう郵便物を苦労して届けても,万国郵便条約上日本国内で郵便代は取れないから郵政省はもろに持ち出しのはずである。こういうのが,先日の郵便料金値上げの引き金になっているかもしれないと,ちょっと申訳なく思ったりもしている。
PC Magazineさて,そうやってやってくる中にPC Magazineがある。あまりいつも付箋だらけでくるので,郵政省に申し訳が無いと思ってアイルランドの発送元に先月「郵便局がとても困っているから住所を正しくしてもらいたい」むねの手紙を出しておいたのだが,全然何の効果もなくてまた付箋だらけでやってきた。
この会社の宛て先住所システムというのはどうなっているのか,契約が切れたから代金を払えという手紙だけは不思議と正しい住所でやってくる。手紙の文章が理解されなかったのかどうか,こうなれば,なんとか郵政省にがんばってもらうしかない。とにかくそんな風にしてやってくるPC Magazineのこのまえの号ではサブノートの特集をやっていた。
いろんな広告などにPC Magazine Editor's Choiceとして引用される雑誌評とはどんなものだろうか。評価というのは酷評すればいいというものではないが,おおむねPC Magazineの評価はからいようだ。特にWindows Abilityについては,モノクロマシンは軒並みPoorの評価である。
で,このサブノート特集でEditor's Choiceになったのが東芝のT3400Cである。カラーTFTディスプレイつきでサブノートサイズというのはいまのところあまりないらしい。
我々がやっているような画像情報を出先から送るためにはディスプレイがカラーTFTで256色出るノートサイズ以下のマシン(持ち運ぶために)というのは必要条件であるが,やはりそうでなくともGUIを快適に使うにはカラーは必須ということなのであろう。
カラーにするとカラーフィルタで光をロスするぶん,表示部分の消費電力が大きくなるが,これもニッケルメタルハライド電池を使用するなどで,おおむねほかのモノクロマシンと同等の使用時間を実現している。ノートにくらべればディスプレイサイズが小さいのもバックライトの照射面積を減らせるからよいほうに働いたと思う。
見易さという点でも7.8インチだってそれほど劣る感じはしないなと思う。HP100の文字の方が12行でもまだ小さいようだし,これで見られるのなら当面9.5インチとかに比べれば1枚の元基板からだいぶたくさん作れるのだから,ノートもみんなこのサイズのパネルを採用すればいいような気もする。が,実際はこのサイズのパネルはあまり作っていないようだ。そのためにカラーに注文が殺到してもさばき切れず,納期は数ヶ月かかる事がネックらしい。
(でも,これを高田さんがすでに入手されてるので,使い勝手などの話がきけると思う。)
とにかく何年か前からずっと変わらずノート(サブノート)のネックはディスプレイで,それがいまの液晶業界の好調を引っ張っているわけである。
今日の朝日新聞によれば,昨年のPCの出荷はノートタイプがデスクトップを上回ったということだし,ウインドウズの使用比率はますます高まっており,ほとんどすべてのマシンにカラーディスプレイが付く時代も近いだろうから,まだしばらくは液晶フィーバーというのは続いていくのだろうと思う。
ただその先,PDAでも何でもカラーという時代がくるにはタマが無いな,と思っていたところ,先日のエレクトロニックデバイス展でシャープからまた興味深いディスプレイが出展されていたらしい。
(残念ながら僕は見にいけず,又聞き。また日経エレクトロニクスの記事でも扱っていた。)
ゲストホストという,液晶に顔料をまぜてこれをスイッチングするタイプの反射型TFTカラーディスプレイである。
ゲストホストというのはむかし車のスピードメーターに液晶表示がはやりかかった時期によく使われたやつで,液晶にまぜた色素によって表示するから,ほかの液晶表示板につきものの偏光板が1枚ですむ。つまり光のロスが減るから暗い光源でも明るい表示ができる。車の場合は,光の条件の幅が広いので周囲の条件に合わせた表示ができやすいものとして使われた。同様に今回のでは暗い反射型でもカラー表示が可能という点が活かされた。バックライトさえなければHP100やOmniのように超低消費電力も可能になる。
シャープの試作品では透過型の1/30の電力だそうだ。ではなぜそんないいものがいままで使われなかったかといえば,もちろん問題があった。中に色素をまぜるため,液晶の抵抗値が下がってしまって,消費電流が多いこと,そのために大容量の表示ができなかったのである。
で,シャープでは色素材料の純度を上げるなど工夫をして(不純物が多いと電流が流れ易い)電流値が下がるように工夫してTFTで駆動したようだ。その外に表示面積の割合を上げるため(つまり明るくするため)にTFT構造を工夫するなどもされているらしい。
いまのところ,フルカラーにしてしまうとカラーフィルタの透過率が悪く,暗くなってしまうためにフィルタはシアンと赤のフィルタしか使っておらず,白,黒,シアン,レッドの4色しか表示できない(マンガの色付きページのようなもの)。
他にPDAのカラー化に使えそうな技術としては多結晶シリコンTFTがある。これは現在ビデオカメラのビューファインダなど1インチ程度の画面しかできないが,これがもうすこし大型化して4〜7インチ程度に出来れば,駆動トランジスタ面積がほぼ無視出来るほど小さくなり,その上駆動回路もこの上に作り込めるから,少電力高光利用効率が望める。
ま,いずれにしても,これからの液晶ディスプレイの鍵はやはりTFTだと思う。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #527 | 94/ 4/27 23:20 |