Takechang の冗談半分 #533 | 94/ 5/ 5 9: 6 |
日曜日のレースでアイルトン・セナが亡くなった。
この前のパシフィックグランプリでもセナのレースはたったの10秒。今年のF1のポイントリーダーは着実に力をつけて来たシューマッハ(あの,ビルクリントン似)で,これで3連勝だから,ダントツである。
過去の栄光のあるセナとしてはどうもいいところがなくて,なんだかすごくあせっているように見えるところがあった。その矢先の事故である。
今回のイモラサーキットは高速コースの上に,今回セナが突っ込んだタンブレロコーナーでは,5年前にベルガーが大きい事故を起こしている。
それでも,なんの対策もとられていない。こういったコースそのものの要因,セナ自身の問題,車の問題,いろいろがかさなったのだろうが残念なことだ。
F1ではここ10年以上も死亡事故はおきておらず,フレームのカーボンファイバ化によってコクピットがつぶれてドライバーが押しつぶされるなどの事態がおきにくくなり安全な競技といわれるようになってきていたのに,今回は予選のラッツエンバーガーとあわせ連続2件の死亡事故である。
今期,上位チームと下位チームの差をなくすためにとられたアクティブサスペンションなどいわゆるハイテク禁止がこの事態の引き金ともいわれている。
使いこなしてこそのハイテクだが,使いこなせない者のためにハイテクを禁止してしまって事故……というのはどうも悪いパターンの典型である。
興行上は,ハイテクを導入できない下位と上位の差が開きすぎてはおもしろくないということなのだろうが,それにしてもエンジンその他機械的に昔の物でない(要するに性能が上がった=パワーが出ている=速い)ところに,それをサポートするハイテクを失ってしまったというのは,どんなにドライバにとって辛いことであろうか。
たとえて言えば,必ずエディタを使って仕事をしていたもの書きがパソコンを失って,昔のペンとゲンコー用紙に戻されたようなものではないか?
もの書きの場合,それで書けなくなって生活の糧を失うというのも深刻な事だろうが,少なくともそれで事故になって大怪我ないしは死亡なんてことはありえない。
ドライバの場合,もともと毎度命懸けのところに,それをサポートするハイテクを失うのでは,逆戦国自衛隊状態(つまり,現代の戦場に刀だけで乗り込んでしまった……)という感がある。
セナの故国ブラジルでは3日間の喪に服し,国葬をおこなうというし,日本でも,セナを育ててきたホンダの青山ショールームにセナの死をいたんで飾られたマクラーレンホンダ時代にセナの乗っていたマシンのところにはのべ1万人以上の人が弔問に訪れたという。
それから,先日起きた中華航空機の着陸失敗事故も,まだ原因は不明なものの,フライバイワイヤーといわれる電子制御式の操縦方法を採用したいわゆるハイテク機で,そのハイテクの自動と手動の切り替えをおこなっていてトラブルに陥ったようだ。どうも,ハイテクと人間の関りについての共通点があるような2つの大事故である。
いくら死者をいたんでも,もはや生き返ることはない。冥福を祈ると同時に,ハイテクと人間の関りかたについて考えさせられる事故だった。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #533 | 94/ 5/ 5 9: 6 |