Takechang の冗談半分 #554 | 94/ 6/ 5 0: 8 |
台北の朝は早い。7時前からバイクのけたたましい騒音が始まる。
続いて,道路工事の音。昨年からずっと続いている台北駅前の忠孝路の工事であるが,今年はさらに大胆?になって,上り,下りともに車線の半分をフェンスで仕切って(それでもまだ2車線づつあまっている。本来はとても広い道路だ)さらに工事が続く。
さながら,「高度成長時代(死語)」の日本のようである。ワールドトレードセンターへの道は昨年でわかっているから,経費節約の為にバスで行った。今年はほとんどの車両にクーラーがつき,そのかわり$10が$12に上がった。
バイクがイナゴの群れのように満ちている道路をけたたましくクラクションをならしながら,急発進,急停止のバスはゆく。
中に乗っている僕等はそのたびにもみくちゃである。どうも,こういう雰囲気,いつも走りまくっているんじゃないと台湾人は調子が取れないのだろうかなあ,としか思えない。どうみたって,タダでさえ暑苦しい気候をさらに暑くしてしまうような彼らの行動である。
ワールドトレードセンターに着いてもしかり。
Exhibitionは9時に始まっているはずなのに(渋滞で台北駅からワールドトレードセンターまで1時間ちかくかかった。すいていれば,20分ほどのハズ),まだまだブースは工事中である。
2Fのプレスルームへ行くようにという指示が入っていたから,それにしたがって2Fへ行って受け付けをすると無事プレスバッジをもらえた。
プレスバッジのバリューはアメリカより日本寄りというところだろうか。
日本のBSなどでは,プレスバッジはくれるものの,その効力は? といってもほとんどないようなものだ。
一方,COMDEXではその威力は絶大で,数百ドルかかる参加費用を全部タダにした上でさらにいろいろな便宜をはかってくれる。
プレス資料というのも専用の部屋が用意されているぐらいで,それこそ全部集めていればいくらFedExに運送料を払わなくてはいけないか……というくらい山のようにある。
晴海では部屋はあるものの,ほとんど10人入れば満員のようなところで,資料などは主催者資料以外はない。
COMPUTEXもほぼこれに似たようなもので,部屋は晴海なみに狭いし,主催者の資料とコーヒーぐらいが用意されているだけである。
主催者広報資料によるとCOMPUTEXは14回目(もう,そんなにやっているのだとは知らなかった),出展社数は553。
アジア最大のコンピュータトレードショーというだけあって,ほぼ晴海のBSの2倍規模である。
で,このトレードショーというタイトルがCOMDEXなどと大きく異なる理由を示しているといっていいと思う。
COMDEXはConferenceであるから,講演会などがすごく多い。ショーブースだけ見ていてもだめという由縁である。
COMPUTEXでは,大体1日に10ぐらいのセミナーがあり,おおむねNT$1000ぐらいの有料である。プレスバッジはこれには通用しない(つまり,NT$1000払わないとダメ。だいたい5000円であるが,物価の水準から考えると結構高いと思う)。
また,今日は中国語で行われるのが多くて,もしもお金を払ったとしても,皆目わからないことになるだろう。どちらかと言えば,ショーは国際的(8500名ほどの外国人が訪れる見込みとのこと)であるが,セミナーは国内むけ,ということか?
キーノート(基調講演)もあるが,これはタダで,しかも英語だ。ということで,これは参加した(詳細はあとで)。
とにかく,こんな具合で「一応セミナーもある」という程度にあるのだが,基本はトレードショー,つまり「お客様に製品を見せること」に置いているのがいまのCMPUTEXである。
でもって,ブースに行って「これはいくらぐらいするんですか?」などときこうものなら,すかさず営業部長が飛び出して「で,月にいかほど買っていただけますか? 最低オーダーは500台から承っていますが……」と,もみ手でやってくる。
「プレスだから,別に買うわけではないが」などと言おうものなら,たちまち彼らは落胆して,不承ぶしょうにリテイル(定価)を教えてくれる,という具合。COMDEXのように,プレスバッジを見て,山のように資料を押し付けられてしまう,なんてことは全くなくて,「あ,そう。御客様じゃないの」って感じである。
このあたり,明らかに彼らはプレスの価値を大きく見ていないという証拠なのだろう。対米進出は自分の力で勝ち取ったものだ,という彼らの自信なのだろうか。
(でも,同じ彼らがCOMDEXにいくと「プレスおいでませ」になるのがおもしろいところだ。)
このあたり,直接商売にならないものは気にかけないという日本型の?価値観を彼らは持っているのかな,という気がした。主催者にしても,プレスむけに準備しているのは,市内観光とか,チャイニーズオペラ観劇というようなツアーのみで,本来の取材につながるようなものはまるでないのである。
そのかわり,バイヤー用のサロンは広いものが用意されており,自由に使えるという寸法だ。
その外,このショーの全体の感じを一言で言えば,とにかく台湾そのものであるということ。つまり,朝のバスと同様全力で突っ走っている感じ。つまり,能力いっぱいのハードウエアを目いっぱい作って売ってやる! というような,なんだか往年の「浪花の商人」みたいな雰囲気が満ちている感じだ。
で,ブースで聞いてみてもとにかく,「この先どうなるか」なんてことは考えないで,とにかくいまをガンガンやりまくるというスタンスのようだ。
半年前がサブノートなら,次はDX4ノート,いまじゃあペンチアムノート,というような勢いなのだ。
まるで国を挙げて自転車操業のような調子で止まるところを知らない。「数年すると,中国に香港がかえって……」なんてことを僕がヘタな英語で言い出しても「そんな先のことより今,今」という雰囲気なのである。
彼らには,数年なんて長いスパン?の話はお呼びでない?ようなのであった。
このぶんだと,マラソンのようにペース配分を考えて日本企業がやっているうち,彼らはどんどん追い付き,追い越して行ってしまうのではないのか,という気がした(通信販売で有名なプロサイドの社長が行く先々に現れて「とにかく世の中ハエーよな」といっていたが,これが物を見た率直な感想だと思う)。ただ,本当にその先といってもたった数年後にどうなるのかを彼らが思わないのか,という疑問は当面解けることなく残った。
6月2日記 竹中 俊
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