Takechang の冗談半分 #564  94/ 6/ 6 16:17

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COMPUTEX'94 取材まとめ

1. スーパーハイウエイのまとめ

行く前に,国内の新聞や雑誌でスーパーハイウエイ特集を連日見せられ,「台湾はどうするんだ」と思っていたスーパーハイウエイに関するまとめ。

中正空港は国際空港とはいうが,ボーディングゲートも21しかない。主滑走路も1つしかない。小さいと言われている成田のさらにまた半分である。とても,国際航空の要衝になる規模ではない。

というわけで,日本も台湾もhubをもたない国である。

つまり物流,人の流れの面で,2国ともアジアの中心ではない。

Singapore Changi Airport

アジアでのhubはというとそれはシンガポールのチャンギ空港である。小さい島国の何分の一かのスペースを使ってこの国はhub空港を作ったわけである(このことによって,シンガポール航空の躍進も始まった)。

情報の流れでいくとどうか,といえばこれもやはりアジアにおけるhubはシンガポールになる公算が大きい。シンガポール政府はグラスファイバーによる基幹回線を1998年までに国じゅうにはりめぐらすといっているからだ。

日本は国土が(シンガポールにくらべれば)広いこともあり,世論のまとめが出来ないこともあり(とにかく,前政権以来,国家にとって重要な事は何一つ決まっていないのだから! 全体の合意といったことの必要な社会基盤を作るような事業にはきわめてうまくない状況である),情報インフラとわめく声が大きい割には事は進まない。

産業界だけがあせっている感じだが,実際の動きがついていかないのだ。

現在の台湾はどちらかといえば醒めていて,産業界も,この分野でリーダーになろうとは考えていないようだ。

インフラだけあせって作ってみても,どう利用するかがまだ混沌とした状況では,結局「ソフトなければただの電線」だし,そういう期間はアメリカにやってもらって,自分達はペリフェラルの供給者として参加すればいいと割り切っている。

このあたりの情報通信についての台湾の消極さというのは,今回外国のIDを国内で使わせない鎖国政策?に転換したために,昨年はできたぼくのアクセスができなくなったことからもはっきりしている。

たしかに,現状を見ていれば,日本も台湾もアジア地域での盟主にはなれそうにないし,そういう前提で考えるならば,消極的ではあるものの,台湾の路線は堅実だともいえるかもしれない。とにかく余計なお金はかからないだけは,日本の現状である,わめくだけわめいて実際がついてこない状態よりはましである。

国全体をつなぐインフラストラクチャのようなものは,トップダウンで事を動かす能力というか,国全体のまとまりというものが必要だが,超小国シンガポールがその点でまとまりがごくいいのにくらべ,日本も台湾もまとまりの悪さではいい勝負である。

日本はご存じ前政権時代からもうずっと大きい話がきまったためしが無いし,台湾は台湾で,このところのテレビニュースのトップが国会の連日の乱闘事件,これも審議内容そのものよりも礼儀だセクハラだと関係ないことで騒いでいるのは日本と同じである。

日本も台湾も,経済人が政治は何もしてくれない,と嘆く種類の国なのかもしれない。

日本についていえば,結局の所これで21世紀社会における社会基盤の主要で大きいものを2つとも(物流と情報通信のhub)逃すことになり,いよいよアジアの盟主というか,「アジアといえば日本」という時代ではなくなってしまう事になるだろう。

本当に気掛かりな我々の21世紀である。

2. 台湾の産業と日本の産業の現状について思うこと

台湾産業の現状を一言で言えば「元気がいい」これである。ただ,その元気のよさというのは,庶民の明日をあまり考えないで「とにかく,今,今」という生き方に根差したものである。

本当の事をいえば,台湾には,本土との問題,通信インフラをどうするかといった問題……,どちらかといえば日本以上に問題は山積みである。

そして,政治が混迷を続けているのも日本と同じ。違っているのは,まるで日本の高度成長時代のような台湾人の活力と,疲れてしまったような,気力の無い日本人の状況である。

技術的にも,ことPCの製作技術についていえば,最先端,最高速,最小,など「最」の連発で迫る台湾勢に対し,相変わらず技術を小出ししている日本勢では,だいぶ水があいてしまったな,それもだんだん間隔は開いていくな,との感を強くした。

また今回,スーパーハイウエイの話はほとんど零にちかかったもう1つの理由は,台湾のネットワーク関連企業というのはどちらかといえば零細企業が多いことだ。モデムを3種類,それもデスクトップだけ,ポータブルのだけ,とかHubだけ,といった企業群である。それを,できる限り安値で売る。

そういうことで,彼らがインフラストラクチャなどの話にのるには体力的に無理があることも,いまのスーパーハイウエイフィーバーに関心が無い一つの理由であるかもしれないとも思った。

3. 取材体制について

今回現地からのアクセスができなかったことは非常に残念だった。現地体制が変わったことについては,事前に分かっていたことだし,それでも使えるのかどうか,は1本国際電話をかけてみれば分かることだった,と反省している。

とにかく,現状では台湾からのアクセスについては僕には有効な手段がない状態なので,なんとかこの次はこんな失敗をしないよう,対策を考えるつもりだ。

竹中 俊

Takechang の冗談半分 #564  94/ 6/ 6 16:17