Takechang の冗談半分 #568  94/ 7/ 9 22:54

プータロー日記 120>
地方の時代

地方の時代ということがかなり昔にいわれた。

いわく,渋滞もないし,家は安く広い。物価は安い。賃金は安いが可処分所得は都会より多い。緑の中の生活。

というよーなことで,ユーターンだのジェイターンだのアイターンだのという言葉があふれた。

ところが実際はどうか。

人口1万人の町に住む僕が朝バイトに出かける時は決まって渋滞。15km先に仕事にいくのに1時間かかる。もちろんビンボーだから,家はウサギの家のほうが広い。

物価は高い。工業製品,例えば地方の必需品の車などは寒冷地仕様とかで都会で買うより数万から10万円も高い。安売り王城南電機などはない。野菜などは確かに都会より新鮮かもしれないが,価格の絶対値は別に変わらない。

賃金は安い。地方の安い賃金が日本経済を支えていたのだからあたりまえだ。それどころか,バブル崩壊と円高で,安い地方の賃金でも海外より高くなった。だから,安い賃金でも仕事があるならましなほうで,仕事がない心配をしなくてはいけない。

土地代は安い。これは確かである。が,都会のバブル崩壊は都会の土地,不動産の代金の低下を招いた。地方の価格は変わらないか,やはり上がっていく。なので,相対的な比率は地方が上がっているし,割安感でいえば今はるかに都会が上である。

昨今のマルチメディアだのスーパーハイウエイはそれに追い撃ちをかける。日本版ナショナルスーパーハイウエイは主要都市は2000年にネットされても,地方は2010年とかでないとネットされないという計画になっている。計画は遅れるのが常であるという法則からすれば,始まりが予定通りとしても,終わりはもっと遅れるのではあるまいか。

農村のCATVが救世主になるかと思われたが,アナログの上双方向通信の能力はあるが,当分双方向通信に開放する予定はない。オラの町のシステムは何とかいうえたいの知れない(例えばビデオオンディマンドとかね)ことには使わせねー,という住民的合意?がある。

かくして,地方にマルチメディアの時代はそうかんたんにこない。

ところで日本の空にはどこにだって,たとえば香港のスターTVの映像は飛んでいるし,CS局もいくつもの放送を送っている。情報は得られるはずだという話も成り立つ。ところが,それらの情報コストは高い。巨大なパラボラアンテナを施設できなければ見ることはできない。だから,やっぱり地方では情報は得られない(得にくい)のである。

それどころか,スターTVだのCNNだのということでは,東南アジアの国々のほうがかえって簡単に情報入手ができるようである。このあいだの台湾でだって,いつも見ていたのは香港のスターTVだったのである(それに出ているアイドルは酒井法子だったが)。

もちろん,情報以外の事でも地方の時代などということは金輪際ない。結局,日本の地方人はもっと物価の安い国に出ていくしか平安は得られないのではないかと最近しみじみ思っているのである。

それ以外の人だって,リタイヤしたら故郷に帰って……,などという発想は今後とても成り立ちにくいはずである。

竹中 俊

Takechang の冗談半分 #568  94/ 7/ 9 22:54