Takechang の冗談半分 #570 | 94/ 7/27 18:24 |
6ヶ月耐えてきたぼくは,昨晩から,切れかかっていた。
どうしたのだろう,ぼくは? コマッタモンダなあ。
昨晩のGVM合宿では例によって小川さんによるインターネットのデモが行われた。「インターネット,インターネット」という話はもう半年も前から高田さんからいやというほど聞いているし,昨晩から今日にかけていろいろ洗脳?されるは,オドされるは,「インターネットせんやつは,GVMにいるな」的プレッシャがかかっていた。しゃばでは,週刊誌も新聞もよるとさわると情報スーパーハイウエイ一色。
でも,僕は「びび,ビンボーだから」堪え難きを耐え,忍びがたきを忍んで,この6ヶ月,「(ビンボーだからなー)インターネットに関心をもってはいかん」と自分に言い聞かせてきた。銀座のホテルに合宿に来たときの僕は「とにかく,見るだけ」と決めてきたのである。
ところがそれなのにそれなのに,ゆうべの強化合宿,今日,幕張のネットワールド/インターロプの帰り,半年耐えてきたのがついに切れてしまった。
「うう,しゃないインターネットしてみるしかない」となってしまったのである。
以下,その一部始終。
今日もかんかんでりであせダラダラの人々の列に入って幕張についてみると,アメリカンフェスティバルというのが会場の半分で行われていて,こちらに行く人も結構多いみたい。
で,ネットワールド/インターロプの使用スペースは幕張のカマボコ3つぶんである。登録を済ませて会場に入る。入場証にはIDとパスワード,バーコードが入っており入り口ではバーコードの部分をリーダーでなぞっている。
あと,IDとパスワードの部分は,というと会場内でスタンプラリーのようなことをやっていて,それにアクセスするときに使っていた。
さて,実はネットワールドに来るのは,これで2回目だ。
この前は,まだ会社員のころ,LANを導入するための機器を見て歩くためにきたのである。
ネットワークに関する僕の知識はそのころでとまったまんま。いま,単なる個人としての僕にはほぼネットワークの必要性がないように思われるし,もちろん例によってビンボーなのでいろんな増設のための力もない。半年にわたって高田さんが「インターネット!」とわめき,ついには連載まで始めていても,そういうわけで消極的な僕だった。
で,今回のショーで出ているような,ATMだのフレームリレーだのということはとんと分からない。
この前,昨晩と小川さんにデモをやってもらったため,「目知識」としてインターネットの状況をみたことがあるよ,ってなぐらいなものだ。
それでも,会場に入った途端に,マイクをもった説明の女性から,パンフを渡しているおじさん達までやっぱり,「インターネット,インターネット」という大合唱なことはいやがおうでも耳に入ってきてしまう。
あちこちで昨晩みたような画面が出ている。使っているソフトはMosaicだ。インターネットの写真というとかならず出てくる画面右上にワッカになったケーブルで囲まれた地球の絵が回転しているあれである。
NCSA Mosaic新聞でもなんでもモザイクばっかだけど,それはつまりこのソフトがいままでUNIXの知識のある人でなければアクセスできない感のあったインターネットをたんなるクリックだけの操作にしたからだ。これによって,極端な場合,DOSのWinも使ったことのない人がいきなりInternetを使えるような状況ができたのである。これ以外にも,昨晩の小川さんのデモではチェロなどにたようなソフトが出てきたが,幕張ではとんとみかけなかった。Internetといえばあのモザイクの地球儀の絵という印象なのだ。
さて何社かのプロバイダブースでモザイクをさわってみたあと,ぼくは会場のようすをさぐりながら,ぶらぶらとしてみた。
会場の規模はMACWORLD Expoとおなじぐらい。だけど,ちがうところは熱気である。マックで感じられるあの熱気のようなものがとんと感じられない。
人の数もマックにくらべればだいぶ少ないのかな,と思うけどそればかりではなくてあの,なんというかマックの時に感じるワーンという迫力が無い。
どうも来ている人達がスーツ軍団,それもオジサン中心というところがその原因かなという気がした。わりあい,僕のようにようすを見ながら通路をぶらぶらとしているひとが多いのだ。
情報スーパーハイウエイというので,なにかいいことがないかとつい来てみた,という「様子見」の人が多いのではなかろうか。
実際になにかアプリケーションがあればまた話も違ってこようが,実際にはインターネット以外にはとくにこれ,ということがない。どうしたらいいんでしょうかね,とスーツ軍団のおじさんたちのさぐりあいが続いていた感じだ。
Sun Microsystemsほとんど唯一ぐらいに「ネットワークを使ったアプリケーション例」だと思ったのはサンマイクロシステムズでデモしていたワールドカップサッカーのビデオオンディマンドである。
先日のワールドカップの時にリアルタイムで全米9箇所の会場からワールドカップの映像や情報が送られていたのだそうだ。
まあ,そのぐらい。だからいわれる割には日本では現実にインターネットというのは動いていないんだ,というのがよくわかった。
なんで,騒がれる割には動かないのか。いつものことだけど,だれかやってくれたらあとをついていく,というような人が多くて,みんな見合っている。だれも実際に「こうすればいいんだよ」ということを示さない。いったい難しいんだかどうなんだかすらもはっきりしない。
あと,CNNなどが日本ではあまり見られていないというのとも関係しているが,「英語版状態」では,どうしても「敷居が高い」。
(これについてはGVM合宿でも英語版しか見ていないが,幕張ではいくつかのブースで日本語化したモザイクが動いていた。)
そのほかUNIXうんぬんのことはともかくとして,ほかに日本におけるインターネットの敷居をたかくしている理由にオカネのことがある。
とても高いのだ。アメリカの情報スーパーハイウエイというものは「だれでもがいつでもアクセスできる」というのがウリだから,インターネットの回線費用はタダだ。使うソフトもモザイクのような優秀なのがフリーに手に入る。ハードウエアに関しては,すでにWindowsが動くPCがあり,コンピュサーブなどにアクセスしているなら,新たに投資するものはなにもない。これが,アメリカのインターネット熱を加速している。
日本ではどうかというと,大学や研究機関にいて,ローカル回線からアクセスできる環境の人をのぞけば,プロバイダという回線接続業者のホストに接続し,そこから外部に接続する形になる。この接続料金というのは知る限りかなり高いようだ。
たとえばインターネットイニシアチブ(IIJ)に接続するにはIIJに1分30円はらって,あと電話なりISDNなりの回線料金を負担しなければならない。
しかも,接続ポイントは東京か,あってもいくつかの大都市ぐらいにしかない。まるで,8年ぐらいまえのパソツー黎明期のような状況なのである。「うーむ,やってみたい……が……。」僕の気持ちはあやしく揺れた。
こういう状況でも東京に住んでいて,おカネがあれば別に問題が無い。
実際,このまえの合宿で小川さんのデモを目にしてえらく感動してしまった編集者のTさんは大枚をはたいてT3400CTを買い,さらにはきのうの合宿で小川さんの特訓をうけてPC-VANにアクセスするまでになった。あと,Mosaicはすでにインストールされているので,IDが手に入ればすぐにでも始める状況なのである。
くやしいなあ。さびしいなあ。ま,たいていビンボーにはこういう悲哀があるものだが,今回はまわりではこういうふうにどんどんインターネットにアクセスしていくのにできなくて結構ストレスがたまる。
とにかくカネはない。だからいままでいくらけしかけられてもグジグジしていたのである。でも,昨日から,デモを見せつけられ,アクマのよーな?誘いのささやきを何度も浴びせられ,その上いままでパソコンのパでもなかった人までインターネットしてしまうにおよんで,ついに僕は降参した。
なんとか,やってみよう。いや,とにかくやれるかどうか検討してみよう。本来は「インターネットはカネモチしかできないもの」ではないはずである。まったくの個人が,できるだけオカネをかけずにやる手段がなにかあるかもしれない。
できないならできないでどうしてできないのか,どこが悪いのか,さぐってみよう。こういう事をやることは黎明期の今,きっと意義があることに違いない,そう思うようになってきた。
というわけで,「幕張で僕は切れた」のである。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #570 | 94/ 7/27 18:24 |