Takechang の冗談半分 #019 | 92/ 3/13 23:46 |
水,木,金と皇居の北の丸にある科学館(子どもの頃来たことのある人も多いのでは)で行われた,ディスプレイデバイス展に行ってきた。
この展示会は一般にあまりなじみが無いかも知れないのだが,毎年行われて,今回で7回めである。
ディスプレイの範疇であるなら,CRTその他もあっていいようなものだが,昨今はフラットディスプレイ,それもLCDがほとんどとなっている。
その外に,CRTならばハイビジョン用とか,蛍光表示管,LED,プラズマなどがいくらかあるという状態である。
今回はあまり語られない,マイナーなフラットディスプレイについてまず述べてみたいと思う。
LEDについては,いよいよブルーを展示しているところがあった。
LEDでは従来,赤,緑は実現されていたが,青がないために,フルカラーの表示ができなかった。青があれば,当然フルカラー表示が期待される。
でもまだ,単体の表示器のみであって,RGBセットのものを出していたところはなかった様である。
理由は青は光ったといっても極弱い光に過ぎず,赤に比べれば発光強度は2ケタも低い。これではRGBのバランスを取った場合は,ごく暗くするしかなく,結局まだRGBセットはむり,従って,ビルの壁面などのディスプレイも,当分フルカラーを望むのは難しそうだ。
(光というのは,赤が波長が長くて,緑,青と短くなっていくが,波長が長ければ光放出に要するエネルギーが小さくて済むから,発光強度は比較的簡単に大きくできる。しかし,波長が短くなると急激に効率が低下し,そのために同じエネルギーの注入で得られる光は弱くなってしまう。そこで,各社ができるだけ発光効率のいい材料を研究しているわけだが,いまのところようやく,なんとか光るレベルに達したところなのである。)
また,だいたいは,1つのLEDの表示に要する電流は20mAとかで,RGBセットとすると60mA,これが640*480とかだとかなり大電流になってしまう(電圧は2V程度と低いのだが)。
このため,高輝度の青ができれば(およそ,今より1ケタ明るい必要があるだろう)LEDのフルカラーディスプレイができるとしても,その場合,「カベカケテレビ」にはなるだろうが,それは消費電力と寸法上,「ビルの壁に掛ける」テレビになってしまうだろう。
PCの表示や,家庭用のTVなどのためにはちょっと消費電力上難があるし,コスト的にもかなり高価になりそうだ。
次にプラズマ。
単色(普通はオレンジ)のプラズマはおなじみのやつで,中にネオン系のガスを封入してあり,上下2つの電極で放電を起こさせると,ネオンの放電色のオレンジに光るというしかけである。
これはすでに,かなりの実績があるディスプレイで,単色でいいというなら,消費電力,重さ以外の表示特性そのもの点ではLCDより優れている。
それらの点でも,東芝ダイナブックのものなど,LCDに遜色ないものもできている。大画面,ハイレゾのものもすでに多数出ている。
ところが,これでカラーをやろうとすると,急に話は面倒になってしまう。放電色そのものを見る方式では,同時に異なった色は出せないからだ。
そこで,封入ガスをヘリウム+ネオンとしてやる。すると,放電による発光は紫外線になる。
そこで,蛍光燈と同じようにこれを蛍光体に当ててやると可視光に変換できるので,蛍光体として,赤,緑,青のものを選んでこの順に交互に配置すれば,ドットマトリクスとしてフルカラー表示ができるようになる。
(普通の蛍光燈の場合,外から見て,白いのが蛍光体で,紫外線が当たると白の光……またはかなりひろいスペクトル分布をもった可視光……が出るようになっているわけだ。EPROMの消去用の蛍光燈はこの蛍光体を塗ってない,単なるガラス管になったやつで,従って直接外に紫外線を放射し,ROMの記憶を消去する。)
PDPの発光方法にはAC型,DC型があるがどっちにしても,モノクロでさえそれほど明るくはない程度の発光強度のところに,カラーの場合,紫外線を発光させ,それが当たって出る2次の可視光線を見ることになるので,発光強度,つまり明るさを得ることはかなり困難である。
ところで,このカラープラズマ,熱心にやっているところに,NHK,日本発条ではなくて日本放送協会がある。
NHKがなぜプラズマカラーか,というとこれは実は,いまNHKがものすごく熱心にやっているハイビジョンと関係がある。
ハイビジョンは横長画面(現行の3:4に対して9:16と横が長い)でドット数も5倍に増える。このため家庭で使うような20〜40インチ画面をCRTで作ると,電子銃の精度を必要とする関係から,奥行は長くならざるをえない。
これではせまい家に置くのには不都合がある,というのでフラットで大画面なテレビ,いわゆる壁掛けテレビが必要とされたわけだ。
TFT液晶ではシャープがすでに壁掛けテレビを売りだしているが,これは8.4インチと小さい。あとで書くが,この上のサイズ12〜15インチくらいのは各社がいま研究開発段階にあり,20インチだの30インチはまだ先の事である。
すると,プラズマとしては,小型では液晶に先行されているが,この大型分野では先行できる可能性があるわけだ。
(もっとも液晶では,直視タイプのものは出来ないものの,映画のように投射するタイプなら,レンズで拡大すればいいので,液晶セル自体は小さくていい。この考え方に基づいた投射型のものはすでに幾つか出ているが,これの欠点はあまり明るくできないので,周囲が暗くないと見えにくいことと,光学系などが場所を取って奥行の大きいものになってしまうことである。)
というようなことで,NHKがOKI電気と開発しているプラズマカラーが今回展示された。
発表されたスペックによれば,
有効面積 | :538*358mm(対角25インチ) |
セル数 | :768*512 |
セルピッチ | :0.7mm |
最大照度 | :100cd/m2 |
コントラスト | :50:1 |
階調数 | :256 |
ということである。
実際の表示は,ほんとに100cdもあるのかいな,という位ちょっと全体に薄暗いし,かなり大きいドット欠陥(発光しない点)があちこちに存在し,そのうえ映像ソースがNTSCビデオ信号だったからかどうか,全体にちょっとボケた絵であまりぱっとしなかった。
しかし,その,水族館かなんかの魚の泳ぐ映像は自然に多階調を実現しているし,圧倒的に速い応答速度,そしてもちろん大面積などTFT-LCDにない点も結構多い。
見栄えの状況としては3〜5年前のTFTの状況とちょっと似た感じである。
まだ,表示品位以外にも,ドット数でもハイビジョンの領域に達していないが,このまま開発がうまく進めば,1997年と言われる,ハイビジョンの本放送に間に合うように「大画面壁掛けテレビ」が実現出来るかも知れない。
もちろん,LCDだって開発のテンポは速いから,1997年位には直視型の25インチなんてのができるかもしれないのではあるが。
とににも,かくにも,今の所,25インチもの大画面で,フルカラーでフラットなパネルを実現しているのは,これしかないのである。
(実は展示品は奥行50センチはありそうだった。何が奥行を食っているのかは分からないが,本来,プラズマパネルそのものはすごく薄いはずだ。また,実際はもっと大きい33インチのも出来ているらしいが,これはNHK技研公開の時までおあづけらしい。)
ま,所詮,5年も先の話などはほとんどワケがわからず,ほとんど野とも山とも,という世界なのではあるが,なんとなく期待をもたせるカラープラズマであった。
TAKECHANG
Takechang の冗談半分 #019 | 92/ 3/13 23:46 |