Takechang の冗談半分 #070 | 92/ 6/ 4 8:33 |
さて,実際のガソリン車の状況についてふれる前に,カリフォルニア州の規制について書いておかねばならない。
これはこの前の排ガス規制論議が高まった時もいちばんウルサかったのはカリフォルニアで,今回も州独自の規制をすでに採択している。
カリフォルニア州規制 | |||||||
排出レベル | 現行 | 93年 | TLEV | LEV | ULEV | ZEV | 企業平均 |
NMOG値 (g/km) |
.24 | .16 | .08 | .05 | .025 | 0 | |
1994年 | 10% | 80% | 10% | .155 | |||
95 | 85% | 15% | .143 | ||||
96 | 80% | 20% | .140 | ||||
97 | 73% | 25% | 2% | .125 | |||
98 | 48% | 48% | 2% | 2% | .098 | ||
99 | 23% | 73% | 2% | 2% | .070 | ||
2000 | 96% | 2% | 2% | .045 | |||
01 | 90% | 5% | 5% | .043 | |||
02 | 85% | 10% | 5% | .042 | |||
03 | 75% | 5% | 10% | .039 |
NMOG値というのは,HCの値からメタンをのぞいたものだが,おおむね日本規制のHCの値と思っていいだろう。で,この規制では製造メーカに対し,おおむね上記の%でその区分の車を販売し,企業平均としては右の値を達成しなさい,というものなのである(LEV = Low Emission Vehicle)。つまりこの規制方法では大型車ほど不利になるので,その分少しは許してあげましょうということだ。ただ,ZEVつまり Zero Emission Vehicle については,各年次で上記%の販売が義務づけである。
いまのところ,一般にZEVというと,たぶん電気自動車しかないだろう。規制ではあと5年かそこらすると,カリフォルニアで売る車の100台に2台は電気自動車でなければならない,といっているのである。
(現時点では電気自動車というものは,おもに電力会社のパトロール用などで,日本に1万台もない。)
電気自動車そのものは古く,例のインペリアル・ホテルの自動車博物館では1910年位のモデルがあったが,その後操縦性,出力,充電などの問題で淘汰されてきた。
今のところ,カリフォルニアだけの話ではあるものの,無視できないのは,この種の規制についてはいつもカリフォルニアがパイロットであるから,時期はあるていど遅れるとしても,そのうちアメリカ中でこの種の規制がかかるに違いないと思われるからだ。リミットはまあ,98年。それまでは今の規制に若干上乗せ程度の規制値の車もかなり売れるが,2000年では,LEV以上の排出ガスの車は売れなくなる。LEVでは現在に対し,20%の水準にしなさいというもので,何らかの革新がないと現状技術では困難だろう。
革新とは,アルコール燃料やら,水素といったものももちろんあるが,これらは燃料の供給をどうやってやるか,など未知の問題も多い。今のガソリン車ベースと思った方が無理が少ない。
ZEVにしても,同様で,技術的問題は多い。また,ZEV=電気といっても電気の元は原子力だったり,化石燃料だったりする。水素にしても,電気分解でつくったりする。ZEROなのは直接車が排ガスをださないという意味で,現状では各々の段階の効率を考えると,ひょっとするとZEVよりLEVぐらいのほうがトータルの汚染がすくないかもしれないというような話もある。一筋縄ではない。
現状のごく近いところでの解答は,昨年末,三菱とホンダが発売した希薄燃焼方式のガソリンエンジンであろう。
この方式では,ガソリンと空気の混合比をできるだけ大きいところで燃やしてやろうとするもので,使用燃料が少ないから当然でてくる排ガスも減る,ということである。
そのうえ,燃費も10モードで三菱が21km/l,ホンダが20.5km/lと通常の燃焼方式の同排気量,同トルクの車に比べて20%以上よくなっている。
ただ,現在の排ガス浄化システムとしての3元触媒は理論空燃比(燃焼状態が最良のガソリンと空気の混合比率14.7:1)付近では90%近い浄化能力があるが,希薄燃焼の領域ではほとんど浄化能力がない(が,上記の車では排出量そのものが少なく規制はクリアする)。特に,NOxの排出量が増えてしまう。
また,始動時,加速時,登坂時など大トルクの必要なときには希薄燃焼では始動できなかったり,トルクがなかったりする。
結局どうするか,というと,始動や加速時は理論空燃比にしてやり,それ以外の時は希薄燃焼にするという方法がとられる。
また,希薄燃焼領域では浄化用触媒が効かないので,触媒がなくても大丈夫な,つまり排気量の小さいエンジンで,車体の軽い車でしかこれは通用しない。
実際,ホンダも三菱も,1500ccで,車重が1t以下,しかもマニュアルミッションの車である。
今後,NOx触媒開発などにより,この辺のカベを取り払う努力がされていくだろう。先日の新聞でトヨタも,希薄燃焼用のエンジンを発表している。
1600ccで,運転状態のよりよくないオートマミッションでも対応できる(このあたり,日本の現状では70%以上がオートマといわれるから,オートマなしでは希薄燃焼は普及しないだろう,さすがトヨタは商売上手)。また,車重1.25tクラスにも対応する。ことし中に搭載車が発表されるものと思われる。
あと数年,減速経済下でも,まったなしの開発が行われているのである。
こういった時,いつも批判の矢面にたつのはF1などである。なんせ,燃料がぶ飲み,しかも何が入っているかわからない(人体には有害と思われる。なにせ,各チームで燃料補給するときは,プロテクタにマスクで完全防護して行うぐらいだから)特殊燃料使用だから。
すでにホンダF1撤退か?などのウワサも飛び交っているが,こういう「お祭」ぐらい残してもらいたいものだ。
TAKECHANG
Takechang の冗談半分 #070 | 92/ 6/ 4 8:33 |