Takechang の冗談半分 #071  92/ 6/ 5 7:46

ディーゼルの状況

最後にディーゼルエンジンの排ガス状況である。

燃焼条件の違いから,ディーゼルではHCなどはもともと少ない。

しかし,いちばん最初に見たように,NOxなどはガソリンと比べものにならないレベルで出るし,おまけにガソリンではほとんどない,パティキュレート(すす)の問題がある。しかも,NOx対策として燃焼温度を下げる方法が取られるが,これをやるとパティキュレートは逆に増える。燃費も悪化する。

もともと,ディーゼルが(日本では特に)商用車に好まれるのは燃料代が安いからで,燃費が悪くなってしまっては元も子もない。

ということで,圧縮比をあげるとか,EGR(Exhaust Gas Recycle)をかけるとか,ガソリン同様にNOx触媒を使うとか,さまざまな案が試みられているようだ。

また,パティキュレートは加速時,始動時などに一番ひどく,目に見える。前のトラックの真っ黒なけむりをまともに食らって憤慨した経験のある人も多いと思う。

ディーゼルの燃費は魅力だし,エンジンパワーもそんなにはいらない,でもあの煙がいやでディーゼル車を買わないという人も多い。

ところで,燃費の点では一般人が乗用車を買うなら,儲からないと思っていい。実はぼくも今の車を買うときにディーゼル車の検討をしたことがある。

車種はマツダカペラのプレッシャーウエーブ・スーパーチャージャ付き。同じグレードのガソリン車と比べると20万円くらい高い。しかも,装備はおおむねガソリン車の1ランク下と同じ,足回りもブレーキやサスがやはり1ランク悪い。

それらを許したとしても,3〜4年でペイするためには年間5万キロぐらいのらないと同じグレードのガソリン車の総経費より高くなってしまうのだ。

当然,ガソリン車のがエンジンパワーがあるので,加速などはよい。

これだと,ぼくの場合せいぜい年間4万キロ走行だし,メリットがない(でも,年4万ってのは一般人としてはかなり多いほうだと思う)。

また,細かいことだが,エンジンオイルのメンテもガソリンは1万キロごと,フィルタは2回に1回交換だが,ディーゼルは5000キロ,フィルタは毎回交換の指定になっている。年5万キロのるなら,ほとんど毎月交換を必要とするし,ディーゼルオイルはガソリンより一般に高い。

逆に,いい点を考えると,超長期間乗りたいなら,年間走行がそれほど多くなくともディーゼルのがいいかもしれない。エンジンの耐久性は一般にガソリンよりいいし,モデルチェンジも少ないので古くても部品も手に入りやすいかも。

また,かなり低回転から最大トルクに近い値がでるので,エンジンを回せない性格?の人にはガソリンより扱いやすい特性かもしれない。

さて,汚染の話に戻って,このパティキュレート除去はどうやるかというと,一般にフィルタをかませる方式が考えられているようだ。吸入側のエアクリーナのようなやつが排気側にも付いている,といった感じ。

ただし,排ガスは高温であるのと,あの勢いででるススをトラップするのだから,思った通りすぐつまってしまう。

だから,フィルタにつまったススは結局燃やして取るから,耐熱性のある材料が必要で,通常セラミックなどでできている。

再生のしかたは,車にヒータなどを積んで,積んだままで行う場合と,取り外して別に専用のヒータで行う方法が考えられる。

ニューヨークの市営バスでは2系統の排気トラップを搭載し,車載のまま再生するシステムを実用化している。再生間隔は市内用が4時間,郊外用が6時間,再生時間は7〜10分である。費用は1台あたり約1万ドル。寿命は3年ぐらい。

現在,全体の10%程度の車両に搭載しており,約3800台の市バス全体がトラップ付きとなるのは7年後の予定である。

いまのところ,NY市バスがこのシステムの実用化ではいちばん進んでいるようだ。路線バスで,使用地域や使用状況がほぼ一定しており,すすの付着状態も一定となるため,対策はしやすかったと思われる(それでもむずかしいが)。

一般の路線トラックや長距離バスなどの場合,運転状態が一様ではないし,メンテなどのしにくい場所に行っているかもしれない。都市バスより,対策はさらにむずかしくなる。

日本では,同じく路線バスで,夜間の運転していないあいだに車から取り外して,外の炉で再生する方式を検討中のところがある。

どちらにしても,パティキュレート除去はお金も時間も,技術もすべて非常にかかる。


ということで,カミコーチの意地悪?で突然始まったエンジンの環境対策をしらべるシリーズでした。

しらべてみてどうも気になったのは規制のちぐはぐさ。

はっきり,現状で規制がかかっているといえるのは日本ではガソリン車だけで,ディーゼルは野放しに近い(10の3乗もちがう)。

なのに,ディーゼル車はきて良くて,ガソリン車はダメ(実際にはそう言っていないが現実的には自家用車はガソリンが多く,営業車はディーゼルが多い)というような環境規制。

台数ベースではどうかわからないが,商用車,トラックなどは毎日圧倒的な距離を走行しおり,これらはほとんどディーゼル。汚染の総量の意味ではガソリン車だけにきびしい規制をしても何もならないのではないか?(それにしては,一時より,光化学スモッグとか言われることが少ない。これって,工場とかのタレ流しが減ったから? どうしてなんだろう?)

ディーゼルエンジンの排ガス浄化は難しいなら,いっそ大型もガソリン車にすればいいのではないか? そんなことをすれば,ガソリン代で物流コストが上がる? こういうのは原価なのであるから,別に計算したわけではないけど,幾らあがったって800円のクロネコ運送費が1000円になるぐらいなのでは?

全ての物価がこの勢いであがる!のかもしれないが,そのぐらいしょうがないんじゃないかな? 多分,僕らは車を使わない生活には戻れないと思うし。

The Gods Must Be Crazy (1980)

純正アフリカンのニカウさんのように(空からコーラ瓶がふってきた時の人)何処まででも歩いていくなんてワザはもうない。

なら,なんとかちょっとでも汚さないようにって気遣いは必要で,それのために値段があがるなら,しょうがないのではないか。
(これを許さない,というのは,原発断固反対!といいながら,家に帰るとエアコンをかけまくっているという状態とちょっと似ている。需要があったら,電力会社には供給する義務が課せられているのだから,原発コワセというなら,需要を減らす努力というものもまた必要である。)

うーん,ところで石油は供給できるのか? ということを考えずに話してきたのに気が付いた。これって,どうだったんだろう?

なんだか,よけい疑問の部分もでてきてしまったようである。

TAKECHANG

Takechang の冗談半分 #071  92/ 6/ 5 7:46