Takechang の冗談半分 #265 | 92/12/27 23: 2 |
> #240/264 Takechangの冗談半分
> ★タイトル (TAKECHAG) 92/11/24 7:49 (100)
> CMDX>ん?
でちょっとご紹介したトンキラ農場工房ほだびにまたパンを貰いにでかけた。
今日は我が家の総勢10人が勢揃いしたので,ちょっと時期遅れではあるが日本式クリスマスごっこをやろう,ということにしたのだ。
ほだびのパンはほぼヨーロッパ系のパンで,あんまりその辺では売っていない。
ライ麦パンのカンパーニュなどは,田舎では手に入らないので僕は見ようみまねで作ってみたりしたわけであるが,ここではプロのお作を入手できるというわけだ。
外にないので,延々1時間以上国道153号を南下してでも行く訳である。
昼神温泉郷中日球団の落合選手が毎年合宿をやる昼神温泉をすぎたあたりから,路面に雪が見えるようになってきた。
ウチのあたりでは年内はまず雪の心配はないから,スタッドレスなんて持っていないし今日はたかをくくってチェーンももたずに来てしまった。
ひょっとするとひょっとするかも知れない。慎重に車を進める。長野の最南端といってもここはさすがに山の中で,スキー場もあるぐらいだから,結構雪深いところなのである。
トンキラ農園トンキラ農場の看板がでて,153号を外れたあたりから,いよいよアイスバーンになってしまった。愛用のピレリP600タイヤはドライ性能は今時の60タイヤよりかなり劣るが,その代わりウエットや雪もそんなに苦手でもないという特徴がある。車1台がぎりぎりの山道をそろそろと走るとなんとかトンキラ農場にたどりついた。
なんだか,大勢いる。相模ナンバーと松本ナンバーのカリブに満員の人がちょうど帰るところで,ほだびの松本さんが見送りに出ていた。
「いやー,雪が来ちゃいましたねえ」といいながら,僕も見送りの人に加わった。今日は見たことのない(といっても,僕はまだ3回めだからこっちのほうがストレンジャーなのだが)人がいる。
3回目ともなると松本さんも僕の顔を覚えていて,「いらっしゃい,コーヒーでも入れましょう」とコーヒーを持ってきてくれた。
これで人当たりの悪いぼくだけど,ついトンキラに寄りこんでしまうことになった。
今日いる人は熊谷デザイン事務所の熊谷さん。トンキラの常連で,今日はここでアクリルえのぐで描いた南信の風景画のミニ展覧会をやっていた。
先方がひとなつこいのに押されて,人見知り記者?の僕もしぜんにちょっと取材をしてみる体勢になってしまう。
まずは,前から気になっていた「トンキラ」について聞いてみた。
トンキラとはなんのことか?
トンキラとはししおどし式の水車?のことだという。
ここでは昔からそういう言い方をしていて,車の付いた水車ではなくてこういうやつがどこの家にもあったのだそうだ。
工房の前に作られているのがそれだ。
じゃ,ほだびは? これは囲炉裏のなかで燃えつづける火のことだという。
「粉食文化の研究を通して,より豊かな暮らしを支え続けながら,一人ひとりの心に火を灯していきたい」という意味をこめて名付けられたのだそうだ。
トンキラはこのパン工房ととなりの食堂だけだと思っていたけど,この一帯の山畑,上の昔の寄宿舎(このことばを使うような昔の学校なんかの寮みたい)風の宿泊施設をもっているという。
前の道を白人の女性が通っていく。聞いてみるとイタリア人のジャーナリストの奥さんのアメリカ人で,「日本のイナカのお正月を体験したい」と夫婦でここの宿泊施設に泊まっているのだそうだ。
いろんな人が来るのである。
あと,来年にはこの下の空き地に水(これは松本さんがここに移り住んだのも,いい水がほしかったから,ということでこだわりがあるのだ)に関する本とカテモノ(糧物と書く。米沢藩のききんの時の資料で,野山の草木の何が食べられるか,どうしたら食べられるかを記した書物。第二次大戦のころ長野県食料事務所がとりいれて,いまにつたわる)の資料を収集した建物もできるのだそうだ。
「いろいろやるんですねえ。」感心して僕がいうと,「いやー,小さい村だからね,やろうと思ったら,やっちまえばなんとかなっちゃうのね。」なんだか,きらくなようないいかげんなようなことを松本さんはいう。
松本さんといえば,長野に長野さんはあまりいないし,松本にも松本さんはあまりいない。
なんとなく地元の人じゃなさそうな気がして,「松本さんはUターンじゃないですよね?」ぼくがきくと,「うーんなんてーんだIターンかな,ぼくなんか九州だから。」やっぱりそうなんだ。
Uターンでなんか始めようってと結構逆に昔からのシガラミなんてのがあったりして,イマイチやりにくいような気がするんだけど,いろいろやれるのはIターンてとこもある?
「ん,まーどうせよそからきたやつだから,なんかヘンなことやってんなーなんて最初からおもわれてっからね,かえっていろいろやりやすいってとこはあるかもね。」
ふーん,そうなんですかね。でも,じつはいろいろ聞いていると松本さんが特殊ってわけでもないようなのだ。
ここの村には地球の子供の家といって,登校拒否のこどもばかりを集めた施設がある(さっき,カリブで来ていた人たち)し,天文村といって大型の望遠鏡をそなえた施設もあるのだという。
天文に関していうとここのような山奥で人家のあまりないところはいいはずだ。
僕の住んでいるあたりでも,近頃は街灯がつくようになってしまって,子供の頃にみたような降るような星というのはもう見られない。天の川をミルキーウエイというけど,あれは本当に真っ暗なところでみると気分がわかるのだ。隙間なく星がしきつめられていて,確かにミルクを流したように連続的に見えるのである。
30cm級の望遠鏡をそなえているのだという。
いやー,山の村の人はやりますねえ。
なんか,「やっちまえば,なんとかなっちゃう」のか知らないけど,やりたい,ってのをそのまま商売にしてしまって,モウケルというよりは楽しんで暮らしているようなのである。
(じっさい,松本さんはいつもたくさんオマケをくれてしまう。これで,商売になっているのかなあ,と心配してしまうぐらいである。)
充実した生活かあ。いいなあ。ま,サラリーマンでは無い生活である。
で,熊谷さんのようないろいろなひとが集まってきて,また新しい企画が湧いてくる。トンキラは地域の活性化センターのような役割もはたしているのだろう。なんか,村役場にアイデアマンの人がいるんだ,というようなことも言っていた。
アクティブな過疎の村の生活,過疎の村で感じるイメージとは全然ちがうようである。
いろいろ話ははずんだが,夕方になってウチの宴会に間に合うためにはそろそろ帰らなくてはいけない。
注文しておいたパンをもらって,「正月休みはどうするんですか」と松本さんに聞くと「いやあ,イタリアの人もいるしねえ,だれもいなくなっちゃう訳にはいかないでしょ,それに家にいるよりはここにいたほうが楽しいから,ずっとやってますよ」ということだった。お礼を言って外に出ると,もうあたりはうすぐらかった。
▼現在の松本さんのお店:参考資料
トンキラ農園農事組合法人 工房ほだび TEL 0265-47-2364
(気分や季節により,パンの発送を承ります。)
TAKECHANG 竹中
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