Takechang の冗談半分 #267 | 92/12/30 23:21 |
このまえ,なんかの時にチラと書いたけれど,僕はいまだに正月になる前,餅つきをやっている。
郷土資料館といったようなところにでもありそうな木のウスとキネでつく,昔ながらの餅つきである。
この道?20年になる。
兄が大学に入った年以来,年末はスキーということで帰ってこなくなったから,以来僕の仕事になって今に至る。
ま,年に1回のことではあるが,いちおう,超ベテランなのである。
ことしは,まず,もち米の買いだしから始まった。
田舎でも米を作る農家は段々減っているし,今年からは僕が夏の重労働を嫌ったので,
(〜行抜けあり?〜)
このようにして田圃は日本から段々姿を消していくから,なんだかんだ言っても結局,カリフォルニアの米とかがなくてはやって行けない時代が来そうな感じがする。
さて,必要なもち米は全部で9升。6升は母が近所でもらってきたから,残りの3升を調達してこなくてはいけない。
農協に買いに行ってみると,今はこういう容積表示の売り方はしていない。2kgの袋入りである。2kgとはいったい何升であるか?
売り場の人に聞いてみたが,時代のせいか,若い担当者はだいたい升などという計量単位を知らない。
それこそ「しょうがない」ので,1升=1.8リットルであるから,比重が1とすると2kgは概ね1升強という換算ではあるまいか? ということで3袋を購入した。
これが昨日の事。餅米はきれいに洗って,一晩水に漬けて十分に水分を含ませてある。
けさ,父の家に行ってみると,すでに玄関前に炉が出来ていてマキが景気よく燃えており,上にのせた釜の煮立った湯の上には蒸し器に入ったもち米が入って,湯気を景気よく上げていた。
まあ,昔ながらなのであるが,本当は昔はモミガラのカマドで火を焚いていたと思う。僕が小学生ぐらいのころまでは,田圃で乾かした稲は家の庭先まで持ってきて,そこで脱穀をしたものだった。
だから,その時に大量に出るモミはほぼ1年ぶんの燃料として蓄えられていたものだった。その後は,コンバインで共同で稲刈りをし,そのまま農協に持って行ってしまうから,家にモミガラがあるなどということはなくなり,従ってモミガラのカマドもガスレンジに取って替わられた。
いまはモミガラはどうしているのだろうか,単なる産業廃棄物として焼却処分にしているのではないだろうか。あるいは,秋に新潟方面に行くと稲わら焼きの煙がスモッグのようになっていたのを見かけたことがあるが,あんなふうに田圃で焼いているのだろうか。
昔の農家というものは,こんなふうにして食料からエネルギーまで田圃や畑から自給していたのである。
いまは,農家といえども燃料はプロパンガスやら灯油であるが,これはこのさきいつまで続くのであろうか。
さて,1時間もこうして湯気にあてていると餅米はだんだんに柔らかくなってきて,指でかるくつまむだけでつぶれるようになる。
こうなったら,いよいよ餅つきである。
蒸し器から,ウスに移す。キネでこまかくついて米をつぶしていく。
よく,テレビのニュースのもちつきというとガンガンひっぱたいているところだけが映るが,最初からあれではきれいにつぶれないのだ。
というか,ひっぱたくのは最後で,最初にジミにつぶしていくのが重要なのである。
この工程なくしてはきれいなモチはできないのだ(と20年のベテランは語る)。
外の露天なので,すぐに冷えてきてしまうから,迅速であることも重要な要件である。
ということで,一気につぶしからひっぱたきに移る。この工程ではすでに餅のねばりがでてきているから,ただたたくだけでなく,手返し(餅の上に出ている面を入れ換えて均一につぶれるようにすることと,下の部分がウスにくっつくのを防ぐ)が重要になってくる。
これは相棒は30年選手の母にかぎる。タイミングが合わないと手返しの手をたたいてしまったりするから,呼吸が大切で,これもまた年季のたまものである。
数年前に妻がやろうとしたことがあったが,なかなかタイミングが合わなくてあえなく挫折した。以来,腰がいたいとかぶつぶついうものの,この役は母が健在である。
だいたいにつぶれてくると,あとは整形のためにかるくつく。
ひとしきりついてまとまってきたら,ウスから餅を取り出してのし板に移す。
餅とり粉(米の粉)をつけてくっつかないようにしながらのし棒でのばしていく。
1臼=3升の餅がだいたい1m角にのびたらOKだ。
おっと,最初の1ウスはお供え用の丸モチだ。
これも本来稲ワラで餅を切り取って作るのだが,最近は稲ワラがないものでなかなか苦労する。
約3時間ほどで3升のモチはつき上がり,めでたくことしの正月の準備は終わった。
昼はつきたての餅でトリ肉(昔はウサギだった)とイモ,ネギの雑煮を食べるのが決まりである。
餅はやはり手でついたのに限る,とかおだてられて20年たった。
TAKECHANG 竹中
Takechang の冗談半分 #267 | 92/12/30 23:21 |