Takechang の冗談半分 #360 | 93/ 4/22 8:38 |
さて,ライカレンズはどうしたらきちんと長城で使えるようになるのだろうか。
だいたい,なぜライカとネジ寸が合っていたかということは,たぶん長城の設計者が,たまたま「ライカオタク」系の人だったと見ていいだろう。
それで,自分のカメラを設計するときについライカサイズでやってしまったのではないだろうか。
ただ,ライカは35mm,長城は6*6で,フィルムサイズがまったく違うから,焦点までライカに合わせて,ライカの交換レンズを使ってしまう,とまでは考えなかったのだろうと推測している。
Toyota Crown (初代)いまだと,意匠権とかで大騒ぎになってしまうが,観音開きのクラウンがどことなくアメ車だったり,ホンダN360がどことなくモーリス・ミニだったりしたのと通じるところがあるのかもしれない。
長城の作りは非常に簡単で,鋳物削りだしのフレームに板金加工やらアルミ削りだしの部品をネジ止めした,というようなものだ。
従業員10人のXX精機のオヤジがカメラマニアならば,独力で作って地方新聞にでる,とかいうたぐいのレベルである。
ほとんどマスプロとかけ離れたレベルのお作であると思う。これでまた,ちゃんと写ってしまうところが写真のいいところなのだ。
で,焦点を合わせる工夫であるが,ライカと長城のフィルムサイズより考えて,当然長城のフィルム面に像を結ばせるためのレンズ → フィルム間距離というものは長いはずである。
家の中で最大の長さが取れる廊下というのが,大体15mぐらいある。で,ここのいっぽうの端の壁に子供のチェックのスカートを吊るして,カメラのほうは三脚につけて廊下を移動する。
そして,一体どのくらいの距離でピントが合うのか,を測定してみた。
長城オリジナルレンズは,ほぼ表示の位置(1m表示なら1m)でピントが合う。
ライカは表示3m(最短距離)で約10mないとピントが合わないと分かった。
これではたしかにそれだけの距離が取れるシーンというものは限られてしまうはずだ。
で,レンズを取り外してカメラとの距離を取ってみると,もっと近い距離でも焦点があうようになる。
「表示3mで3mの位置でピントが合うもの」にするのが今回の目的であるから,カメラをカベから3mの位置に置き,レンズとカメラ本体の距離を動かしてピントの合う位置を探る。
おおむね,カメラ前面から15mm浮かせてやるときちんと表示位置でピントが合うということが分かった。
こうなれば,いわゆる「ワッカ」筒の両端にオスネジと雌ネジを切ってあるもので,長さ15mmのものを作ればいいわけだ。
最初はこれは光学機器であるから,光学機器屋がいいだろう,と考えた。
幸い,ぼくの従兄弟に,あるカメラ用交換レンズメーカーに勤めている男がいるのを知っていたので,この男に頼んでみようと思ったのである。
土曜日。数年ぶりでこの従兄弟に電話した。彼は交代勤務の夜勤で帰ってきたばかりだったが,快く相談にのってくれた。
ただし。彼の会社はこの不況のせいかどうか,もっと大きいレンズメーカーに身売りしてしまっていた。今は,ビデオカメラのレンズとか,CDピックアップレンズとかを専門に生産し,機械加工などはいっさいやっていない。
「悪いなあ。1年前だったら,こんなものオレが昼休みにでもすぐ作れたんだけどね,いまは工作機械がぜんぜん無いんだ。」彼はすまなさそうに言った。
惜しかったなあ。あと1年会社が持ってくれるか,あと1年早くライカオタク化していたら……? などとバカなことを思ったのだができないものは仕方がない。
しかしこうなったらどうしよう。
「出来ない」となるとなぜか無性にやってみたくなるもので,それから加工屋さがしが始まったのである。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #360 | 93/ 4/22 8:38 |