Takechang の冗談半分 #391 | 93/ 6/11 0:16 |
6月10日夜9時30分よりNHK TVのクローズアップ現代でパソコンの学校市場についての話題を扱っていた。
今年,小中学校に30万台のパソコン導入が決まった。市場規模は2000億円というから,1台あたりの価格は約67万円と想定されていることになる。
いまどき67万円といったらすごい金額(高価)なような気がしたが,これにはプリンタやネットワーク,さらにはソフトも込みの金額であるということなので,まあそんなにすごい金額ということもないのかもしれない。
とにかく,全体で2000億というのは相当に大きい市場である。
これを日米通商摩擦の観点から扱っていた。
通常の民間企業に対する市場では米国資本のシェアが20%あるのに学校市場は5%,これは非関税障壁である,という論理である。
アメリカ・メーカというと必ずでてくるCOMPAQ社のエッカート・ファイファー社長が最初にでてきたからこの線かなあ,と思ったがどうやらこれはマクラだけ。
Macintosh LC II中身としては,Mac LCを導入した渋谷区のケース,Macを排除してFM-TOWNSを導入した堺市の例が紹介されていた。
どちらも機種選定委員会はMacを選択したが,渋谷区ではTOWNS派の議員とすったもんだが1年あってようやくMacが導入され,堺市では機種選定委員会の答申は無視されて,入札によりTOWNSに決定したというようなことだった。
企業としてはほかにNEC,日本IBMとイニシャルだけのM社(このイニシャルだと三菱電機ということだろうか?)がでていた。
これは,どうやら,アップルと日本IBMが外国製代表,NECと富士通が日本製の代表での戦い,外国製が採用されにくいのが非関税障壁ということらしい。
(日本IBMって日本の会社だし,DOS/Vシステムはつくったものの,漢字ROMをもつハードウエアもあるなど,どちらかといえばローカライズされているほうの代表のように思えるが,そういう扱いではないらしい。)
教育市場の要求としてはいわゆるマルチメディア(画像,特に動画と,あと音声。だから,256色以上のビデオボード,サウンドボード,それにCD-ROMドライブなどを備えるハードウエアということになる)が扱えなければいけないので,ソフトウエアシステムとして見た場合は,Windows,Mac,TOWNS OSの戦いという見方もできる。
Macではわが家にもあるキッドピックスでお絵かきをする小学生が写っていたが,その他ではどこも,「ビデオの画像が音声がコンピュータに取り込める」というのをウリにしていたようだ(もちろん,Macではこの機能はQTが担当する)。
QuickTime for WindowsこれはWindows系(NEC,日本IBM)ではMMEないしWinVideoまたはQT for Winの機能ということになる。
ところが,これをPC9821のWin上で積極的にデモしていたNECの担当者の発言が「現場の先生方には世界標準のなんのということは意味がなく,家でもたくさんお使いいただいているPC98……」というのには笑えた。
「家でたくさんお使いいただいているPC98」ではビデオアクセラレータボードをつけない限りこの機能は使えないはずだ(あるいは286マシンならプロセッサのアクセラレータもいる)。
この機能が標準で使えるのは「世界標準」に限りなくスリよったPC9821である。
TVでも「Windows時代も98」と宣伝している真意というのは,「9821なら,世界標準のWinも同じように使えるし,今までの9801の資産もそのまま使える」ということである。
つまり,旧9801をひきずりながらWinになだれ込むことができる,これが98系の現時点での最大のメリットのはずだ。
DOS/Vマシンではバーチャル98などの特殊なハード/ソフトの助けをかりなければこういう芸当はできない。
せっかくのメリットを担当者自らが誤解しているようでは……。
だけどIBMも結構苦しいところがあるように思う。本当はIBMとしては,OS/2を売りたいのだろうに?実際はWinとセットでなければ商売ができない。内心は結構おもしろくないのではないか。
「ネットワークこみ」などと紹介されていたが,なぜかどこでもネットワークの絵はでなかったけど,これがNetWareなんかなら,このこともまたIBMにはおもしろくないはずだ。
富士通の問題はTOWNS OSである。「長い目でみれば,学校で使ったのと同じPCを家庭でも導入してもらえる。TOWNSで育った子供が社会人になったら,富士通を使ってくれるかもしれない」というのだが,これはまたNEC以上に島国の話である。
TOWNS OSはTOWNSでしか動かないOSである。富士通システムそのものも,いくら入力が速いといっても親指シフトなどのやはり特殊な方法を採用する(JIS KBも使える)。
こういうことは,もはやあるクローズド市場(たとえば学校とか)では良くても,これで育った子供が親指シフトを導入してくれるというより,そのときはJIS KBにかえられてしまう……のではないか。
それとも,「そのときはDOS/Vマシンがあるもん。だからブランドは富士通を買ってくれるさ……」というような脳天気な考えがあるのだろうか。
(それには,少なくもあのろくでもないタウンズ・キーボードをなんとかしなくてはいけないだろうと思う。あれじゃあ,義務教育中あのキーボードを使わされた子供たちは,ダイナブックのキーボードを触ったら「世の中にはこんないいキーボードもあったのか!」と驚嘆して,テキストモードしかない?ダイナブックに乗り移ってしまうだろう???)
まあいろいろと文句をこいてしまったけど,この教育市場,ソフトの面からは,MMEないしQTなどのいわゆるマルチメディアが積極的に採用される場である。
ということは,今のところ静止画ですら立ち上がったと言えない日本市場であるが,この30万台という数を武器にあっという間にマルチメディア(それも動画など)の世界になる可能性も秘めているのかもしれないと思った。
竹中 俊
Takechang の冗談半分 #391 | 93/ 6/11 0:16 |